2018年3月18日日曜日
松林尚志「地は寒き灯をちりばまめて天冥し」(「澪」終刊号)・・
「澪」(編集発行人・松林尚志)は、第124号をもって終刊する。「ご挨拶」の冒頭に松林尚志は、
「澪」は瀧春一主宰の「暖流」終刊後、「暖流」の代表であった藤田宏氏が主宰となり、その後継誌として平成九年九月に発足しております。(中略)
私は平成二十三年85号より代表を勤めることになりましたが、主宰には顧問として支えて頂いてきております。(中略)私は体力も限界に近く、遠方でもあり、代表辞任の意向を藤田顧問に伝えました。又経営上の問題もあり、昨年暮れ、「澪」の今後について藤田顧問、阿部晶子氏、編集担当の河野哲也氏の四者で話し合いを持ちました。(中略)このような結果になったことは会員の充実を図れなかった私の非力とお詫びを致すとともに、これまで「澪」を支えて下さった同人、会員、誌友の皆様に衷心より謝意を表します。
と述べている。苦渋の選択であったと思うが、終刊号に当たっての特集で「同人・会員随想」には、多くの想い出や淋しさとともに「澪」への感謝が記されていた。また「編集後記」に河野哲也は、
「澪」は終刊になっても俳句に終わりはない。生ある限り、俳句に悩み、俳句を楽しみましょう。
長い間ご協力有難うございました。
と結んでいる。そう、俳句は終わらないのだ。ともあれ、以下に「終刊記念自選作品」から一人一句を挙げておこう。
亡羊を追ひきし荒野月赤し 松林尚志
純白の紙の平らに春の蝿 藤田 宏
春愁はそこなスマホとタブレット 阿部晶子
日本橋昼の御旅所誰も居らず 石渡治子
雷鳴や母の眼開きてまた閉じぬ 伊東香野子
三月十日十一日の御霊かな 奥村尚美
工房に夫の未完の木彫り雛 河野絹子
ここあたり昔炭住花八ツ手 河村雅央
等身の津波のしるしやませ吹く 蔵石玲子
天涯に人影多き敗戦忌 河野哲也
賜りし五体沈めて初湯かな 柴田洋郎
からくりの茶坊主つつと万愚節 蔦谷庸子
ダムの村沈む予定の椿咲く 橋本タキ子
百年後伐られて寒き枝残し 林美智子
黄ばむ句集開けば師の香竹の秋 村川雅子
生きるとは残されること寒夕焼 山口愛子
ひとり来て吉野は神の白水仙 山田ひかる
九品仏一躯は留守の堂冷ゆる 東 真澄
最後になったが、藤田宏「顧問随想」の「郡司由紀さんのこと」は感銘深く、その人のことが回想されている。その人の「澪」入会当初の句と、病を得られてからの各一句を以下に挙げる。
春暁やかろき寝息に和みをり 郡司由紀子
冷まじや鴉の落とす魚の骨
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