2018年3月17日土曜日
折笠美秋「見よ! この人を/この人を 見よ!/時雨来る」(「騎」第15号)・・
本日は、折笠美秋の命日である。1990年3月17日に亡くなった。「騎」(代表同人・寺田澄史、編集兼発行人・坂戸淳夫)は、「俳句評論」終刊ののちに、不治の筋萎縮性側索硬化症(ALS)におかされた折笠美秋を励ますために創刊された同人誌だった(創刊号には志摩聰こと原聡一がいたが途中退会している)。折笠美秋は「火傳書」を連載した。その中に(「騎」第6号)、
「俳句は既に書き盡くされたけれど」と、高柳重信は言った。
「あと一句だけ、まだ書かれていない名句があるんですね」。
「ある日、誰かが、見事にそれを書きとめる。すると不思議な
ことに、また、もう一句だけ、まだ書かれていない名句が残っ
ているんですね」。
(中略)
絶體の
蜜吐く
絶命の
花よ 折笠美秋
ブログタイトルにした美秋の句は、「折笠美秋遺稿句篇(一)の4句の内の一句である。編集部注記には(「騎」15号)、
本号の掲載作品は、折笠夫人のお許しを得て、今年の〈聞き取り控〉の内から、臨時に選択させて戴いた。「野山」、「昔日」二句は新春の初作(一月六日)であり、「雪つぶて」は二十二日、「見よ」は三月二日、事実上の絶筆句である。
と句の下に記されている。よって「騎」次号16号は、折笠美秋追悼号にして実質の終刊号となった。その追悼号には「虎嘯経(全)」(舟蕃舎編)が収録されている。〔注〕には、
本帖は「騎」の号外版としてメンバーズ本10部、外に予備三部を限り刊行された。公開すべき筋合いのものではないが、追悼号なれば敢えて資料文書として採択することとした。
(編集部)
とある。「虎囁経」より、各人数句の中から一人一句を以下に挙げておきたい。
北へ行く舟かありありはなみづき 阿部鬼九男
散り競う
十騎
先ず一騎
咲き 葬送の日に 岩片仁次
平成二年三月七日初七日の日に
中原を眉毛逆立て 一騎去る 牛島 伸
「願はくは吹雪の日に逝かむ」と遺言されけるとなむ折笠
夫人より聞きし。
雪しまく相模大野よもえぎ野よ 川名 大
君亡くて郭公笛はもう吹くまじ 坂戸淳夫
我に山あり重信の山美秋の山 佐藤輝明
迂生『草上船和讃』上木の砌 、「龍耳」の雅印を賜ふ。
一説に曰く「其の聴力甚鈍にして解するに百年を要す」と。
以来自戒の具となし今日に至る。
月落ちて龍耳に達く虎嘯かな 髙橋 龍
三月十五日夜危篤
今生の俤(かほ)と連れだつ春の闇 寺田澄史
-雲雀を贈らんに君は亡くー
天よりも揚がるとおもえ友雲雀 安井浩司
思えば、3月19日の告別の日のもえぎ野は、雪まじりの寒い日だった。
愚生は髙柳重信の葬儀に行かなかったことで、いささか悔いるところがあったゆえ、美秋の告別には何としても参じなければならないと思ったのだった。
話は全く異なって恐縮だが、昨日は、かつて新陰流兵法転(まろばし)会で同門だった加納義明の訃報が入り、今朝は俳句会「夢座」同人の金田冽の訃報が入った。どちらも愚生とさして年齢が違わない。ご冥福を祈る。
撮影・葛城綾呂↑ ホトケノザ↑
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