2018年4月12日木曜日
田尻睦子「日本海へ さくら蕊降る夜の熱」(「頂点」246号)・・・
「頂点」246号、「頂点」の歴史は古く、昭和34(1959)年4月創刊、いわゆる前衛派の拠点の一つだった。が、もはや創刊同人が一人もいなくなってしまった。その初発の志を継承していこうとでもするように、特集は「俳句とは何か(7)」である。それに田尻睦子は「俳句と時間軸」と題して以下のように記している。結びの部分だ。
--まっすぐ、しっかり、泥をぬぐってあるきなさい。いつの時代も、素人が、異端が新しい世界を切り拓く。誰もが五・七・五と詠えば、即俳人。が、荒野に一人、一人ゆく心構え、ジカンという牢獄に伏す覚悟
・・・どれほどの人が持ち得ようか。
あくまでも、他の支配を拒む、自主的制作を。第三者のおもわくに、まどわされない、じぶんの貌を。
断腸の思いが一句に、ひびきわたる句を
目に見えぬ世界が、詠まれてある句を
かならずや ジカンが曳き出してくれんことを
因みに、創刊時の「頂点」のマニュフェストは、(一)詩における批評精神の涵養、(二)新しい抒情の標榜、(三)歴史的、社会的現実の中に在るいつわらぬ感情の表現と新人の育成、だった。ともあれ、一人一句を以下に挙げておこう。
無為の日の延命管と蜘蛛の糸 岡 典子
秋景や遠近に見ゆ日の名残り 辻本東発
日に三度届く列車や冬の靄 尾家國昭
無縁集落にあたたかき肉球 川名つぎお
慟哭の涙は化石寒すばる 塩谷美津子
閻魔詣心の憂さを預けたり 髙橋保博
蛇穴を出てそれからの寿老人 小林 実
夕暮れは嗚咽となりぬ冬の海 杉田 桂
着ぶくれが着ぶくれに割り込んで来る 水口圭子
いつよりか他人とともに春の道 廣田善保
居留守きめこみて一日亀鳴かす 渋川京子
蜃気楼わたしの心臓譲ります 成宮 颯
うららかや影に尻尾が生えてくる 渡邊樹音
天體ゆ さかさに吊るす風の棺 田尻睦子
よ~いどんとたんぽぽ咲いてゆく 森須 蘭
撮影・葛城綾呂 スミレ↑
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