2018年4月11日水曜日
糸大八「水仙の風で航海してをりぬ」(「俳句スクエア」第5集より)・・
ブログタイトルにした糸大八の「水仙」の句は「俳句スクエア」(第5集・20周年記念特集号、発行人・五島高資)の朝吹英和「現代俳句時評」からのものだ。そこには、糸大八の句とともに「俳句の骨法について語った糸大八の言葉」が記されている。以下に引用する。
「まず季語を先にドーンと置いて、その季語にいかに逆らうか、逆らおうとする」
「写生って言うけど、言葉で写生するのは所詮不可能。視覚的イメージで俳句を作る。つまり映像を立ち上がらせる訳よ」
「五七五の中で意味を消していって、意味が字句から見えない。その向こう側に顕ち上ってくるのが理想の俳句だな」
類想類型の罠から如何に脱却して詩情豊かな世界を創造するか、画家でもあった糸大八のイマジネーションから誕生した俳句は味わい深い。
梟の次のまばたきまで待つか 大八
それとなく霞む練習してゐたり
片足を抜く太平洋の晩夏かな
糸大八の語り口は、実に興味深く、俳句の初心者ではなく、むしろ俳句の道を極めようとする上級者向きのつぶやきである。
また、本記念号の「巻頭言」に五島高資が本誌の成り立ちについて次のように記している。
俳句スクエアは、一九九八年三月にWeb俳句誌として五島高資が創設し、インターネット上における俳句会の草分け的存在として活動してきました。現在は、月刊「俳句スクエア集」(二〇一八年一月で通巻一三三号)、「俳句スクエア集」鑑賞、現代俳句選抄などを主な内容としながら、月例ネット句会「俳句飄遊」も共催するなど、ネットを中心に活動を展開しています。
ともあれ、同人集のなかから幾人かの句を以下に挙げておこう。
打水のここより龍の背骨かな 五島高資
搔きだせば龍の記憶と春星と 石母田星人
暁闇の天球儀よりつばくらめ 朝吹英和
万里行く黄沙の下に火を焚けり 服部一彦
蓮の花半分すでに月の水 松本龍子
薄氷を透かしてひかる息の粒 加藤直克
風花や駅より人もそれぞれに 十河 智
鳥のこゑ山人のこゑ谷空木 殊 雪
末黒野に空の真靑の始まれり 真矢ひろみ
三代の句集に恋句雛の家 歌代美遥
岬より道はひとすぢ秋の声 大津留直
無人駅無人で降りるカンナ燃え 瀬川泰之
百均の棚にハロウィン九月来る 野島正則
大寒や今日の卵を食べてみる 前田呑舞
仙人掌の花のめざめる月夜かな 石田桃江
尖塔の青い錆から冬に入る 加藤絵里子
空澄むや葉にワンまろき首飾 山田紗由美
蜩や気管切開前の声 菊池宇鷹
雨はまだ空に預けて半夏生 毬 月
星磨くプラネタリウムの煤払ひ 高井直美
空海の彫りし岩より冬銀河 中川洋子
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