2018年4月23日月曜日
川名つぎお「フロイトや死の本能は土を恋う」(「俳句界」5月号より)・・・
「俳句界」5月号(文學の森・4月25日発売)、の姜琪東の「編集後記」には、
ことし六月で創立15周年を迎える。これは奇跡だ。四月六日付けで林誠司編集長が退職。(中略)小生もこの機会に社長職を辞任、寺田敬子に譲った。
とあった。突然のことで少し驚いたが、愚生は、60歳から4年半、顧問として世話になった会社なので、いくばくかの感懐はある。在職の折り、堅めの企画は多く姜琪東から出されていた。後記に、毎月赤字続きと言いながら、「会社には経営資金はたっぷりある」とうらやましいことが書かれていたが、会社自体は姜琪東が健在であるかぎり大丈夫だろうと推測する。
とはいえ、いずこも世代交代の嵐が吹いているのは間違いなさそうである。
今月号の「特別作品21句」には、偶然だろうが「豈」同人2名が起用されている。もっとも川名つぎおは「頂点」代表、山﨑十生は「紫」主宰でもある。あと一人の和田華凛は、「諷詠」の若き主宰で期待の人と言ってよいのだろう。他にも田中陽が特別作品50句を寄せている。それらの句を以下に挙げておきたい。
さわやかに徴兵なし基地を賜わり 川名つぎお
宇宙と祭りは膨張している
限界地球をなお耕している
同時代のアウシュビィッツを出られない
これ以上ない後腐れつばくらめ 山﨑十生
もうゐない人ほど恋し青き踏む
竹皮を脱ぐに万全たる禊
青鮫忌とどのつまりの原発忌
たまきはる宇智野遥遥夏霞 和田華凛
大坂屋長兵衛冷酒父所望
夏蝶や甍の上の空の色
憲法変えて空母をつくる花が散る 田中 陽
爆弾が落ち蝉でない肉片樹の幹に
「ヒト」の檻に入って・出てかんがえる
天皇も焼跡世代 おわっていく
あと一つ、興味のあった記事は、大輪靖宏・坂口昌弘・角谷昌子の鼎談「現代評論の問題点」。評論とは何かについて、大輪「『俳句とは何か』は、研究を踏まないと出て来ない」、坂口「突き詰めれば結局は観想なんだと。作品の良さを説明する良い感想が良い批評だと思います」、角谷「私は評論を書く姿勢として村上護さんの現場主義を、現場取材を参考にしています。確かに文献だけでは人物像が見えていない」と、三者三様ながら、真っ当な在り様と指摘をしている。
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