2018年10月27日土曜日
鹿又英一「榮市の腰かけてゐる夏の雲」(「夢座」179号)・・・
「夢座」179号(俳句同人誌夢座東京事務局)、城名景琳連載44「季のことば」は、「春」だが、内容は、追悼・佐藤榮市である。そのエッセイの結びに、
この夏は暑かった。涙で濡れた袖はすぐに乾くほどの天気だった。だが、涙で濡れた袖が乾く間もなく、また同人佐藤榮市氏を、黄泉の国へ見送る。天空での夢座同人は増えていく。合掌
とあった。その悼む思いは、本誌本号に溢れている。いつも思うことだが、本誌の圧巻は、齋藤愼爾の連載「巻頭エッセイⅩⅤ 琉球弧からの眼差し」と、巻末の江里昭彦連載「昭彦の直球・曲球・危険球」㊿「兜太が覇者であった時代の俳句(其の一)」である。
前者の齋藤愼爾は題名にもあるように、沖縄のこと、句に、川崎光一郎「海に湧く雲の百態沖縄忌」の引用があり、また、「鬣」から俳句ユネスコ文化遺産登録を批判した文を多く引用紹介している。後者の江里昭彦は、筑紫磐井『虚子は戦後俳句をどう読んだか』と坂本宮尾『竹下しづの女』の両著をめぐっての論考である。俳句関係の雑誌で、この両人が必ず執筆しているのは本誌だけである。是非一読あれ。ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。
榮市の骨になりし日冷し酒 鹿又英一
塩辛とんぼと並走する街道 鴨川らーら
苦瓜やぶらさがるだけの息 照井三余
代役もなし本番の酷暑あり 城名景琳
Uターンのひとくさりあり芋煮会 江良純雄
扉を押して喧騒へ行く梅雨滂沱 太田 薫
北海道大地震
真っ先に日が昇るっしょ北海道 銀 畑二
花野行く雲に付箋を貼り終えて 渡邉樹音
★閑話休題・・・「てんでんこ」第10号・・・
「てんでんこ」10号(七月堂)に、井口時男の18句「句帖から 二〇一八年春から夏 付・無用の注釈」が掲載されている。他にも論「自死とユーモアー西部邁の死について」を発表しているが、ここでは句と無用の注釈(短いもののみ)を以下に挙げておこう。
修行僧若し古刹残雪頑として (永平寺) 時男
*3 「鹿首」12号掲載の若狭湾沿いに原発を探す旅の句の補遺
シベリアの朽木を焚かん魂迎へ
*16 父は四年三ヵ月シベリアに抑留された
火星接近し真夜中の蟬時雨
*18 火星大接近。我が寓居は深夜も蟬時雨の中にあり。灯火と熱帯夜
のゆえなり。
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