2019年10月31日木曜日
山﨑十生「枯れてまでそよぎたくないけどそよぐ」(『未知の国』)・・
山崎十生句集『未知の国』(文學の森)、著者「あとがき」には、
本句集は、番外句集を除いて第十句集となります。処女句集は十九歳の時に出しました『上映中』ですから、俳句生活五十六年間に於いて番外句集を含めて第十四番の一書となります。番外句集には『原発忌』もあります。
とあり、
本句集の題名『未知の国』は、「みちのく」と「未知の句」に出会えることを念じて。次の句集は『未知の国』と決めていたものです。
とあった。さらに、
大震災以後は、私は軽度の手術を幾つか受け、心臓の手術や腎臓癌に依る左腎臓の全摘と健康の面では不安だらけでした。その後、妹や母の逝去と思いもかけない出来事に遭遇しました。
とも記されていた。山﨑十生は、関口比良男の「紫」を継承し、その主宰でもあり、「豈」の最古参の同人でもあるが、俳句関係の協会や文化活動の面、その他の役職などで多忙を極めているようだ。身体を労わってもらいたい。
届いた「紫」11月号によると、本句集は東日本大震災以後の、災害や社会性を中心に編集したので、それ以外の作品は、第11句集『銀幕』として来年刊行の予定だそうである。 また「紫」11月号の「紫」外の執筆者は、作品鑑賞ページの松下カロ「螺旋階段ー『不可知と不可視』」と小野あらた「焦点深度ー『詩情』」であった。ともあれ、本句集よりいくつかの句を挙げておきたい。
ダージリンティー毎日が原発忌 十生
未知の苦の角組む葦が生む水輪
鍵のない空につぎつぎ桜の芽
人間の剥製原爆記念の日
日本忌近し最中のなかに餡
風入れの空き家もういない筈の父
長き夜や三尸(し)の虫をとどめおく
鳩を吹くことに長けたることかなし
まだ力不足の初日でも拝む
霜柱滅する力蓄へる
原発の恩恵何だったのか煮凝
山﨑十生(やまざき・じゅっせい) 昭和22年、埼玉県生まれ。
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