2022年3月1日火曜日

津髙里永子「遺影すでに春のままなる和田悟朗」(『寸法直し』)・・


 

 津髙里永子第二句集『寸法直し』(東京四季出版)、帯の惹句は池田澄子、それには、


 津髙里永子に頼みごとをして断られたことがない。

 いつも自分のことは後回し。

 優しいのだ。

 優しさが対象を凝視させ、深い思い入れとなり、

 自身への微苦笑となり、俳句になる。


 とある。また、著者「あとが」の中に、


 句集名は〈寸法直しせずやしぐるるわが裾野〉からとりました。

 近所に洋服直ししてくれる店があり、肩幅や裾丈など、ちょくちょく直してもらっています。ほんのちょっと手を加えるだけで、とても着具合がよくなる不思議さに感心していましたが、そこのご主人から、大きいのを小さくするより、小さいのをひろげるほうがまだ、デザインもバランスも崩れず簡単なんです、とお聞きしたことがあります。(中略)

 去年九月に亡くなられた深見けん二先生には、何年も前に句集名を染筆していただいていたのですが、実際に句を集め始めると句集名を変更したくなり、ご逝去なさる二か月ほど前、高弟の山田閏子様を通じてお願いして、書き直して戴きました。感謝に堪えません。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、集中より、いくつかの句を挙げておきたい。


   憲法記念日からつぽの天袋        里永子

   特攻魚雷晒さる永久の日の盛

   津髙のツは津波の津の字地虫鳴く

   愛欲や手折りて氷柱手を滑る

   恋猫の脚ともかくも拭いてやろ

   遺書書いて呉るるか朧夜のをとこ

   噴水のこちら側にて生きてゐる

   真鶴の三羽ゆふぐれ二羽ひぐれ

   天に人をらぬ薄墨桜かな

   蟬鳴くか鳴くかと岩を撫でてゐる   

   激戦地跡にトーチカ遺る秋

   男女仕切られ撫づる嘆きの壁の冷


津髙里永子(つたか・りえこ) 1956年、兵庫県西宮市生まれ。

  


★閑話休題・・津髙里永子「愛の日に使ふ両面テープかな」(「ちょっと立ちどまって」2022.2)・・


 津髙つながりで、森澤程とのハガキ通信・2022.2「ちょっと立ちどまって」よりの句を挙げておこう。


  龍天に少女ときどき兎跳び     森澤 程

  部屋飼ひの兎ピアノが匂ひ出す  津髙里永子



撮影・中西ひろ美「男雛のみ譲りて逝きし人の名は書棚にありて日々に親しむ」↑

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