「風」5号↑
「風」五号(昭和12年10月1日・一冊20銭、送料3銭)に、三橋敏雄は、「煙突林」の題のもと、10句を発表し、「愚昧の言」と題したエッセイを発表している。
煙突林 三橋敏雄
煙突林暁けて来らしも四肢のほとり
木々喬しまことに朝日はずみつつ 『太古』所収(木木喬し・・・)
町々にをさなら暁けてはだかなる 『青の中』所収(町町に・・・)
運河ひでりくるぶし太く沿ひ来たり 〃 (・・・来り)
夜のうた
戀しげく柿の裏葉の夜をかよふ 『太古』所収(「春秋」の題あり)
汝が額に花火の音はながからぬ
二百十日後日抄
唐黍の垂毛やあかしうろこぐも *9 『青の中』所収・『太古』所収(「村」の題あり…赤し)
唐黍やとほ山かけてのこりかぜ
こどもらに唐黍の毛は高そよぎ 『太古』所収
唐黍はたそがれみのり兒が食ふ 〃 (・・子が・・)
その号のエッセイ「愚昧の言」の「二」に三橋敏雄(当時17歳)は言う。
我々は最後まで意識せずにほんとうのものを俳句に残してゆかねばならない。―といふことから、我々の出発点はつねに到達した地点に置かるべきである。
そして其時の我々の周囲に、必ずなくてはならぬもの、それはまつたうな懐疑と、もう一つひたぶるな情熱、この二つだけである。
この「風」五号には、読者作品欄の選句を高屋窓秋が行い、作品を「春」と題して9句発表している。読者作品欄の「立場と方針」に「諸君は俳人の為に句を作ることを止し給へ」と記している。
また、作品「春」の9句の中の3句は「河」と括られた小題がある。その3句を紹介しておこう。
花かげの別離男は河をゆきぬ 高屋窓秋
胎動に愁へり痛み眙(み)つむ河
河玻璃にひえびえ泪にじむなり
この年(昭和12年)、高屋窓秋は書下ろし句集『河』を刊行。直後7月7日には盧溝橋事件によって日中戦争に突入した。
スイセン↑
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