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「風」第6号↑
「風」第六号は第五号より予定より四か月遅れて、翌昭和13年3月1日発行となった(奥付は「風」第二巻一号)。三橋敏雄は「H驛断章」の題で5句を発表している。そのうち4句が、改作された句を含めて句集『太古』(『青の中』には再録)に収録。
H驛断章 (句集『太古』では「停車場と改題) 三橋敏雄
貨車の横冬の西日は遂になし
驛寒し機関車の汽缶見ゆれど噴かず 『太古』所収
冬の驛校内に煙すヽみて来たる 〃 (・・・構内へ煙すすみて来る)
機関車の車輪ならびたる雪jけはひ 〃 (・・・竝びたる雪催ひ)句集『青の中』再録
寒き夜を機関車走りいでむと動く 〃 (・・・出でむ・・・)
発刊の遅れた事情のいくつかを、白泉は「後記」で次のように記している。
(前略)★(注・編集兼発行者)兼尾さんは大分ご苦労様だつたのである。警察の人がたびたび調べに来たり、これはまあどこでもの話だから、別に問題の起こらなかつたことを幸としなければならない程であるが、購読者の人々からは一わたりずらつと催促される。(中略)三鬼さんに会へば、会つて俳句の話になつて僕のドグマチックが益々佳境に入つて僕の眼鏡が愈々僕の鼻からずり落ちさうになつて来ると、「時に、風は出ますか」と呼ぶ静かな声がきこえてぼくはしよげてしまふし、窓秋さんは僕の赤面を楽しみに何度も何度も僕に同人費を渡すし、初巳さんのうちへ遊びに行けば、そうれ御覧なさいと言はぬばかりの顔が何べんも僕の視力を弱めてしまふし、青柚子は俳句が出来た出来たと脅すし、三橋敏雄君には悲しさうな顔を示されるし、、僕も参つた。
★さあその皆様御待兼の「風」第六册が出来上つたのである。誰も文句はない筈だ(白)
考えてみると、今は大小あまたの俳句誌があるが、愚生の所属する「俳句空間ー豈」を除いてはおおむね、月刊、季刊を問わず、キチンと遅れることもなく刊行され続けているのだから、よほど世の中は平和なのである。有難いことにちがいない。
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