2015年10月16日金曜日
三橋敏雄「わが家になし絶滅の日本狼図」(「断崖」昭和35年4月号)・・・
掲出の句は、三橋敏雄「〈絶滅のかの狼を連れ歩く〉の原型と思えるが、初出から『眞神』収録まで十年以上の熟考の形跡が窺え、初出の時点でも無季にこだわっている様子が窺える」(『眞神』を読むためのプロローグ」WEP俳句通信88号)という北川美美の新連載「三橋敏雄『眞神』考①」からのものだ。
また、別の項において、以下のように述べている。
敏雄自身も作家としての手応えを得た作品が『眞神』だろう。平成元年『疊の上』に於いて蛇笏賞を受賞するが、作品の独自性は『眞神』に顕著に現れ、四季を超越した無季秀句が、そして敏雄が目指す大人が読むに耐える俳句作品が配置されている。読者を立ち止まらせ、読者をも試される俳句に出会う。(中略)
そこには言葉から発せられた映像と音が読者の脳裏に「空」の世界を創っていくのである。
まだ、第一回だから、どのように進展するか不明だが、今後の展開に、さらに期待がふくらむ。楽しみである。
先に遠山陽子による三橋敏雄評伝があるが、それとは、少し趣を異にして北川美美は、三橋敏雄の句の読みを通して三橋敏雄像を結ぼうとしているのであろう。
「WEP俳句通信」の同号には、「豈」同人からはもう一人、筑紫磐井の連載「戦後俳句の戦略⑤」による論考「秋桜子・波郷・登四郎・湘子ー秋桜子・波郷の発奮」も掲載されている。かつて高柳重信編集の「俳句研究」が「戦後俳句は不毛か」「戦後の処女句集」「戦後○○年の俳壇」「戦後派の功罪」など、戦後俳句の総括を特集として連続して企画していたが、その後、およそ30年経過してもなお、そうした企画は殆どなく、戦後70年の今日、筑紫磐井は、独自の眼差しをもってそれが、俳句にとってどのようなものであったか、を総括しようとしているのかも知れない。スリリングで面白い。これも期待大である。
アゼリア↑
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