安田中彦第一句集『人類』(邑書林)、著者「あとがき」によると鈴木六林男主宰「花曜」、六林男没後は岡田耕治代表「香天」にて句作を続けてきたとあった。収録句の多くから、同時代を歩んだ俳人からの影響を窺うことが出来る。また、パロディ―の句については、前書が付してあるので、どうしても、おのずとその原句と比較感受してしてしまう。愚生の身近なところから攝津幸彦に関しての、
攝津忌の羊の視野のなかにゐる 中彦
鳥帰る攝津幸彦前全句集
路地裏の夜汽車と思ふ金魚かな 攝津幸彦
この世ばゆぶねと思ふ金魚かな
などの句、とりわけ二句目「鳥帰る」の句には、集中に、
ものくるるともがきをらず裕明忌
があったせいか、田中裕明
「悉く全集にあり衣被」との換骨奪胎のようにも愚生には思える。ともあれ、愚生好みの句を、以下にいくつか挙げておこう。
少年はいつも空腹雲の峰 篠崎央子
人類は永遠に空腹月に暈
こどもの日こどもは俘虜となりにけり
地獄坂ここが起点や多喜二の忌
春愁や鶏の蹴りだす土埃
アメリカ忌
空を見よ鳥も機もなき九月の日
原発忌
汚染水淫らに温み初めにけり
風呂吹とボサノヴァのこゑ旨し甘し
声を出す鹿を見てをり愛のあと 久保純夫
ボーダーのあちらへ転ぶ鹿の愛
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