2018年5月8日火曜日
戸恒東人「日本に若き日々あり労働祭」(『学舎』)・・
戸恒東人第9句集『学舎(まなびや)』(雙峰書房)、集名は以下の句に因んでいよう。
学舎は為桜(ゐおう)の園ぞ筑波東風 東人
為桜については、「あとがき」に次のように記されいる。
下妻一高は、父と私の五人兄弟(姉二人、弟、妹)の全てが学び卒業した学校で、「為桜(ゐおう)の園」という美称がある。昭和三十九年に高校を卒業して以来五十四年、いまなお母郷下妻への思いは深く、筑波山を眺めると自然に涙ぐむ。こうした感情はどこから来るのだろうか。
加えて句集表紙に用いられた装丁の写真は、茨城県立下妻第一高等学校、昭和39年3月卒業アルバムの卒業生全員の集合写真から採られている。戸恒東人は「この写真を見るたびに、母校下妻一高の恩愛を忘れることは出きない」という。しかも題簽「学舎」も自ら揮毫したものである。いささかの晩年への思いがそうさせているのかも知れない。
思えば、戸恒東人は『誓子ーわがこころの帆』で第14回加藤郁乎賞を受賞した。その受賞は加藤郁乎存命中、最後の加藤郁乎賞となったものだ。しかも郁乎は、無念にも体調を崩して入院し、授賞式への出席が叶わなかった。つまり、加藤郁乎単独選によって選ばれた最後の名誉ある加藤郁乎賞となったのである。ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
瓢箪より出でし駒もて飛馬(ひめ)始
しろがねは色のはじまり辛夷の芽
淅瀝と寒九の雨となりにけり
有平棒(アルヘイボウ)まはる西口名残雪
母の忌や上枝(ほつえ)かがよふ姫辛夷
料峭やしこりの解けぬ盆の窪
誰が魂を抱けばかく濃き八重桜
凍星や闇に重力あるごとく
凩や母郷のうからすべて老い
戸恒東人(とつね・はるひと)、昭和20年、茨城県生れ。
撮影・葛城綾呂 ヒメヒオウギ↑
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