2018年10月6日土曜日
大牧広「白泉の句のさながらに天の蟬」(『秋日和』より)・・
関根道豊『秋日和ー広俳句を訪ねる84句ー』(私家版)、昨年、つまり2017年4月号から今年の3月号まで、大牧広主宰「港」の「広俳句を訪ねる」という欄を書き継いできたものだという。著者は、新俳句人連盟に所属というから、筋金入りの革新派であろう。選ぶ句、鑑賞文についてもその辺りの事情によく通じている。例えば、ブログタイトルに挙げた「白泉の句のさながらに天の蟬」については、
渡辺白泉は一九四〇(昭和15)年五月三日。「治安維持法」違反で特高警察に逮捕され「執筆禁止」を条件に不起訴となった。あの日から七十七年、ものが言い難くなりつつある今「抗いの俳句を詠め」と蟬が励ましている。
と記されている。そしてまた、「オリンピックはナチスの匂ひ春の風邪」では、
豆を撒かれても気付かぬ大統領と、お追従の薄笑いを浮かべる宰相。三年後の東京オリンピックは、その宰相が居座って指揮を執るのだろうか。かつてヒトラーは「アーリア民族の優位性と自身の権力を世界中に見せつける絶好の機会」として一九三六年ベルリンオリンピックの開会を宣言したが、宰相の「国威発揚と人種差別」を繰り返す愚を先生はその嗅覚で捉え警鐘を鳴らしている。
とも述べている。巻末には「港の広場より」と「編集後記より」から、いくつかの語録も収載されている。序文で大牧広は、
俳句は人の心の結晶。それを俳句道に沿って575の定形韻文で詠む、ということになり関根道豊氏は、その道を責任をもって詠んでゆく。
詠んでゆく以上は、その点に責任を持たなければならない。そして、責任とは、思想上の問題とイコールしなければならない。
関根道豊氏は、その点をしっかりと認識して作品面と行動面にその責を果している。
と檄を飛ばし、讃えている。ともあれ、収載されたもののなかから句のみになるが、以下に挙げておこう。
春北風や「やつにも注げよ」太穂の句 広
春野菜福島産と聞けば買ふ
蟻出でて密告の世を告げにけり
盆終へて帰るちちはは億土まで
反骨はしょつぴかれるか麦嵐
残暑強くて妻をいたはること忘れ
机のものけふよく落ちし秋日和
十二月二十六日ただ無口
1922(大正11)年12月26日、「労働者と農民の、社会主義のソビエト連邦が成立した」。
関根道豊(せきね・どうほう) 1949年埼玉県生まれ。
撮影・葛城綾呂 カナブン↑
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