小西昭夫朗読句集『チンピラ』(マルコボ・コム)、赤色のカバーをとると、表紙に小西昭夫の笑顔の写真がいっぱいに広がる(わざわざ、本のカバーをとる人は、あまりいないから、気づかれないかも知れない)。さらに、章の扉などに、自筆の自画像が置かれている。著者「あとがき」には、
(前略)普通は作品があって展覧会を開くのだが、ぼくたちは作品はないがまず「キャメルK」という画廊を借りた。画廊を借りれば作品を作るだろうという甘い発想である。「自画像に鬚を描いたから鬚を伸ばした」という寺山修司の逆の発想を楽しもうと思ったのである。
こうした発想で様々のことに小西昭夫は手を染めているのかもしれない。朗読句集と銘うってあるので、その通りで、公演のための脚本句集とでもいえば、いいのだろう。一公演に句の繰り返しもあるし、継続して、聴きに来てくれる客人への配慮もあるだろう。だから、小西昭夫を知る人ならば、微笑ましく、より楽しめる句集になっているだろう。彼の体験から、聴く側へのシフトが行われている。
(前略)朗読のスピードに頭がついて行かなかった。それで、自分の朗読にはできるだけ耳への負担をかけないようにしようと思った。(中略)より分かりやすくするために、前書きを入れ、いわば後句付けのように俳句を朗読することにしてみた。これが「チンピラ」の作品群である。(中略)
願わくば、この句集は声に出して読んでいただけるとありがたい。何てったって、朗読句集なんだから。
愚生は、東京の田舎住まいだから、遠くてなかなか聴きにいけないが、近隣の方々は、絵の展覧会と合わせて、行かれてみるのも良いだろう。
本集より、チョッピリだが以下に引用しておきたい。
亀鳴くやアジアに古き雨が降る 「亀鳴く」
蚯蚓鳴くアジアの古き闇の中 「蚯蚓鳴く」
ヒアシンス十年前なら死刑のぼくら 「東京」
結論でございます。
今もまだチンピラのぼく桜咲く 「チンピラ」
結論でございます。
今もまだチンピラのぼく花は葉に
結論でございます。
チンピラを卒業できずチューリップ
結論でございます。
チンピラはきんぴらじゃない亀が鳴く
正岡子規に「若鮎の二手になりて上りけり」の句があります。スーパーでは、
若鮎の空揚げにされ売られけり
「遊五人展」の似ていない自画像のようなものです。
チンピラが鳩になるなり鷹もまた
もう一度言いますが、俳句で大切なことは、元気で、楽しく、くだらないと
いうことであります。お終いでございます。
チンピラが蛤となるスズメまた
小西昭夫(こにし・あきお)1954年、愛媛県伊予郡生まれ。
★閑話休題・・・羽田知行「就活ノート醒めたところでペンを執る
」(第二回口語俳句作品大賞)・・・
第二回口語俳句作品大賞(口語俳句振興会・代表 田中陽)は羽田知行(牧之原市、「主流」)が受賞した(口語俳句振興会会報「原点」NO.4)。以下、奨励賞を含む一人一句を挙げておこう。
未病で生きるつもりへ月の蒼いこと 羽田知行
鳥渡るセンテナリアンならば愛 石田 榮
巡礼にはぐれるときどきニホンオオカミ 堀 節誉
星になってもよいが落ちないか きむらけんじ
種を採る風乾く日の千日紅 田中由美子
撮影・鈴木純一 鉄塔が邪魔 ↑
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