昨日、3月30日(土)は、隔月奇数月に行われる第147回の「豈」東京句会だった。花曇という風雅ではなく、冬の寒さ戻りのような一日だった。「豈」同人だけではなく、他の方々の参加も増え、少しく賑やかな、刺激のある句会となっている。
ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。
森中が泡のかたまり鳥交かる 杉本青三郎
きはむれば白つばき描く青ゑのぐ 渕上信子
抜け殻の本はソファーにさくらさく 早瀬恵子
過去にならない昭和ひっぱる遅日 川名つぎお
索莫と咥へて微熱 花の熱 猫 翁
あまおとの夜伽草子を紙魚の恋 打田峨者ん
啓蟄やカートに園児らは積まれ 伊藤左知子
歳時記をやがて啄む花の鳥 羽村美和子
糸櫻誰そ笛吹ける晴明か 笠原タカ子
菜の花や双耳に雨の音深む 吉田香津代
息抜きの永青文庫さくら時 小湊こぎく
春宵に折りたたまれる骨の音 大井恒行
★閑話休題・・五十嵐進「農をつづけながら2019春ーこれまでのこと、これからのこと」(「駱駝の瘤 通信」17)・・
五十嵐進は、永田耕衣に師事し、現在は「らん」同人である。喜多方市で農業を営んでいる。「駱駝の瘤通信」(駱駝舎・須賀川市)に、次のように記している。
(前略)あの3・11以降、放射能への不安を背後に福島の地で土を耕して丸8年、9年目に入る。地元福島においても、次第に放射能への懸念が薄れていくような民心に乗じて「政府は21日、原子力災害対策本部会議を官邸で開き、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域の一部に再び住めるように整備する特定復興再生拠点区域(復興拠点)について、避難指示の解除の要件や手順、解除前に立ち入り制限を緩和する基本方針を決定した」(福島民報12月22日)「立ち入り制限を緩和」といっても「空間放射線量率で推定される年間積算線量が20ミリシーベルト以下になること」が解除の要件。チェルノブイリ法ならば5ミリシーベルト迢で強制移住となり居住はできない地域であるところが、その4倍も高いとこに帰還をせまられる国が日本なのだ。
この核災による転居を繰り返す(多い人は10回以上)ことなどによる関連死を詠んだ短歌が同誌に掲載されていた。統計では、震災関連死は2200人を超えていて、しかも福島県に集中しているという。
地震でなく津波でもなく核災が死因の人数二千二〇〇は 澤 正宏
川柳では、
墓参りだけの帰省へ射す西陽 野川 清
結びに、五十嵐進は、
2017年、前橋地裁、福島地裁が原発「事故」に対する国の責任を認めた。法律で明確に条文化しなければ、国の補償責任が曖昧になる。不十分ながらも生み出された法律を目的に沿って運用できるよう、改正提案をし、補強していくことが必要であろう。運動が必須だ。自治体条例という形での市民立法「チェルノブイリ法日本版」の会も動き始めている、私も。(2/17)
と、決意している。
チェルノブイリの無口の人と卵食ふ 攝津幸彦
撮影・葛城綾呂 マンサク ↑