2014年1月8日水曜日

佐々木貴子句集『ユリウス』・・・


寒いときに鍋を食べるというのは、冬の季節の特権のようなものかもしれない。
という伝でいけば、その昔、夏の暑いときにアイスクリームを食べるというのも、多分、王候貴族の特権であったように思われる。
江戸時代に北アルプスから万年雪を運んで徳川家に献上したとあるくらいだから、氷菓(アイスクリーム)を作る、つまり雪に塩を加えて氷点を得る技術を利用し、大規模な生産を始めたのはイタリアらしい。
イタリアといえばルネサンス、いささか牽強付会のそしりは免れそうにないが、句集名『ユリウス』はどうやら、ユリウス2世がフランスに対抗してローマをルネサンスの中心となしたことに由来しているのではなかろうか。
もっとも、著者自身はどこにも書名の由来などは記していないので、あくまで、愚生の憶測にすぎない。
果たして俳句の再生が著者の思惑通りになったかどうかは、知るよしもない。
中村和弘の愛情溢れる懇切な序文によると「どれも葛藤の中から生まれたもの、楽をしていない句である。自己の内面を俳句という形式にうまく表出できないもどかしさ。近作などは、内面の形象化などを通して克服し、結実しつつある。結社賞の「陸」新人賞に推し、決定したのはその結実を評価しての判断である。俳壇という広い世界での活躍を望んでのことである」と結んでいる。
さすがに師というものは、慧眼である。
その意味では、句集の編みかたであるが、思い切って初期を捨て、最近作のみでまとめ、世に問うという手もあったのではないかと思う。
たしかに、句集は自身の生きて来た足跡といい、著者にとってはいずれも捨てがたい感慨があるであろうが、もしも、師の指摘にあるように文学的野心(俳句形式への挑戦)とい契機を自らのものにするには懐かしい過去を断念する潔さも無視はできないだろう。若い人への、愚生の老婆心というものかも知れない。
年寄りの勝手な言い草と許して下されば幸甚というもの。
愚生好みの句を上げておきたい。
   
     味のするところが雪のとけはじめ         貴子
     中空の0おごそかに回転す
     水を呑む哀しみとして白鳥くる
     百円で買える贖罪だけを愛す
     ぎりぎりと締めつけて夜を球にせん
     雪晴を仰ぐ巨人の喉(のみど)かな
     龍の眼のつぶさにみえし初詣
     雪解雫地球は少しずつ乾く

*句集『ユリウス』(現代俳句協会新鋭シリーズ)ご恵投いただき有り難うございました。
                  アオキ↓

      

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