2015年11月20日金曜日

藺草慶子「雲よりも水に茜やかいつぶり」(『櫻翳』)・・・



『櫻翳(おうえい)』(ふらんす堂)の書名「櫻翳」は、藺草慶子の母がつけたという。いい言葉だ。愚生は不明にして「櫻翳」を知らない。造語かとも思ったが、桜にまつわる言葉は無限にありそうだから、何かの謂いがあるのだろう。むしろ、なにも知らないままの「櫻翳」という言葉のありようを見つめていればそれでいいような気がする。
集中に桜模様の句も多くあったが、隠れ恋、恋隠れのような趣もないではない。
陰翳ふかいといえば、そうにちがいないが、作者はあくまで前向きである。「あとがき」には以下のようにあった。
 
 言葉はどこまで届くのだろう。私に何ができるのだろう。日々、自分の無力さを痛感するばかりだが、今という時代に生き合わせた一人として、少しでも前にすすんでいきたい。これからも、俳句によって、世界につらなっていけたらいい。

愚生の好みの句を含めていくつかあげておこう。

   一対のものみないとし冬籠
      昭和十九年六月一日、マリアナ諸島にて祖父小川衛戦没 享年三十四
   敗戦日なほ海底に艦と祖父
   向日葵や人老いてゆく家の中
   百年も一日も淡しさるすべり
   寒紅梅晩年に恋のこしおく
   香水や時計すこしづつ狂ふ
   

藺草慶子(いぐさ・けいこ) 昭和34年東京生まれ。『櫻翳』は第4句集。


                                          
                                                    桜木に↑
  

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