2017年3月17日金曜日

五島瑛巳「母呼ぶ声か父呼ぶ羽根か朝涼に」(『車座同人句集』)・・

                                                          表紙絵・五島瑛巳↑

『車座同人句集』(静岡俳句研究会2017・主宰 五島瑛巳)、目次をみると冒頭に「山頭火の詩」の英訳作品が五島はるか・五島瑛巳共訳で掲載され、五島瑛巳「Only Oneを生きて連衆」、五島はるか「英訳俳句『芭蕉・Ai ison Wooipert」、五島瑛巳「百句」、五島はるか「風光 七十句」、そして各同人三十句の掲載と続く。が、何と言っても五島瑛巳の主要と思われる評論・エッセイも収録されており、また、瑛巳・はるかの略年譜までそろっているので、五島瑛巳の俳句における主要な歩みは一望できる冊子である。
巻尾近くのエッセイ、五島はるか「グローバル俳句への挑戦」には、訳出する際の考え方が以下のように記されていた。

 四ッ谷龍氏はある俳誌でこのようにお書きなられていた。
「西洋人に理解されなくても仕方がないからコンパクトに訳すのかそれとも伝達する事を第一に考えて言葉を補いつつ訳すのか・・・」
私は疑う余地もなく、伝達する事を第一に考えて努力しなければならないと強く思っている。西洋人には理解できないのではなく我々日本人がこの戦後七十年の間に己の国の文明文化を尊ばず、見捨ててきた。我々自身がよく説明できないのである。(中略)
 私はこれから自身の血肉となった世界観を皆様によって活かさせて頂き、グローバル俳句の言葉の壁、見えない人種差別の壁へと挑んでゆきたいと思っている。

五島はるか、1977年静岡県生まれ。ともあれ、各一人一句を以下に挙げておこう。

  死化粧の母美しき月光下      五島瑛巳
  春燈を孤島に吊るす母の魂(たま) 五島はるか
  亡き夫とふらここ漕ぐや花の昼  小谷野三千世
  鋼鉄の残響海馬をすりぬける    池谷洋美
  我が裡にファシズムの蟲霾(むしつちふ)れり  山本幸風
  夕焼けが父に戦火を言はしむる   服部椿山
  雪降らぬ町に生まれて雪の歌   小野田風馬
  林立の鉄砲百合や名の哀(あわ) 村田明王
  松手入れ触れなむとして夕三日月  竹下風魚
  夏入日ブナンバナンに石の熱    井上花風
  香花をいくつ供(く)すれば亡夫(つま)に会ふ  小坂恵如
  亡父(ちち)の瞳(め)に海光こぼるる敗戦忌   荻須稔男
  手を離す姉妹に茅の輪くぐりかな  鈴木徳子
  群衆の口中が見え大花火      渡辺幸枝
  白富士に喪の闇もあり歌もあり   小坂由起乃
  

   
  
  


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