「俳諧旅団 月鳴」創刊号(狐尽出版)、献辞がある。
もし主体に依存して写生するのは
むしろ寄る辺ない現象にすぎぬ私自身を
徹底して懐疑する故である
日常に旅し
五七五の器に言葉を注ぎ
鮮やかな映像を浮かび上がらせ
あなたと
このささやかな世界を
わずかな時間を
共有できたらいい
よりよく、生きよう
俳諧旅団長 月鳴会主宰 中内亮玄
多くの人たちの祝辞に送られての船出である。
師を思うひとつに厚きてのひら忌 中内亮玄
てのひら忌(てのひらき)・・作者が、師である金子兜太を偲んだ言葉
ともあれ、「俳諧旅団長級俳人」と称された方々の一人一句を以下に挙げておこう。
神の息花野明りをふと消しぬ 猪狩鳳保
誕生日を明日に七夕竹ざわざわざわ 植田郁一
何よりも御身大切更衣 塩谷美津子
移民法可決鮟鱇鍋沸騰 ナカムラ薫
コート脱ぐそのまま涅槃までの距離 林 和清
★閑話休題・・須藤徹「めめんともり逆白波が陽を掠め」(「こだま」令和2年1月号より)・・・
松林尚志「山茶庵消息」の「『須藤徹全句集』に触れて」に以下のようにあった。(前略)なお古いことになってしまったが、須藤氏と私の出会いに触れておきたい。平成九年、現代俳句協会が創立五十周年を迎え、記念特大号が出ている。編集長橋爪鶴麿氏の案でこの号のために「二十一世紀の俳句を考える」の座談会がもたれた。この座談会は私の司会で、安西篤氏、須藤徹氏、大井恒行氏の四人で行われた。須藤氏に期待するところが大きかったのである。
春雷にランボー読む手ふるへけり 『宙の家』
聖ジュネの遠き断崖つちふれる 『幻奏録』
天の川シュペルヴィエルの唇は鳥 『荒野抄』
めめんともり逆白波が陽を掠め 「ぶるうまりん」
愚生は、すっかり忘れていたのだが、あれは現俳協50周年記念号であったのか・・・(20年以上前のことだ)。ともあれ、「こだま俳句集」から以下に一人一句を挙げておこう。
寒満月無言貫き中天に 松林尚志
埋み火に突っ伏せし刃は五十越せず 勝原士郎
初釜や手前茶を点て渇を癒す 小島俊明
孫帰りカルタ一枚コタツ中 石井廣志
湯に浮きし柚子われに触れ恥らひし 阿部晶子
飛ぶやうに駆け抜けるニュース竜の玉 山田ひかる
侘び助やひととき茶腹間借り生 奥村尚美
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