2020年4月2日木曜日

武藤幹「ニ〇二〇年春 疲れ果てたる正気」(「海原」NO.17・4月号より)・・



 「海原」NO.17・4月号(海原発行所)、記念すべき200回記念の「遊句会」が、新型コロナ感染拡大により、,初の中止になっている間に、そのメンバーの一人である武藤幹が巻頭作家招待席《「海原」3月号海原集》になり、「無為が苛む」と題して10句と「『海程』『海原』に感謝」というミニエッセイが掲載されているではないか。そのエッセイには、師と仰いだ金子兜太の死去に触れて、

   あれから二年、日本も世界も益々劣化の一途を辿っている。それでも反戦・反権力の遺志を継ぐ『海原』が誕生。『海程』と『海原』は、俳句嫌いの私を変えて素敵な出会いを創ってくれた。同人・会友、そして全ての方に感謝です。世界中が「理想」を捨てる今、貴重・必要な存在で在り続けると信じています。

 と記されている。さらなる奮闘を祈りたい。掲載句より以下に5句を挙げておこう。

   蟬氷いくつになってもチンピラで      幹
   老人がナイフを買ふ日曼珠沙華
   芋焼酎死ぬ気の昨日(きのう)明けている
   冬ざれの街に監視のカメラあり
   十二月ペシャワールからくる電話




            撮影・染々亭呆人「久松るす」 


★閑話休題・・・本日、一日での東京都内、これまでで最多97人の感染者を確認の報道あり・・・


 「遊句会」つながりで、渡部保こと染々亭呆人からいただいた便りの件に、

(前略)二月に国立劇場で観た文楽の「傾城反魂香」「新版歌祭文・野崎」は素晴らしかった。
 それで、思い出したのが深川江戸資料館の江戸の長屋再現セットの「張り紙」。
 長屋の狭い格子の門口の長押に張られた「久松るす」。
 冬の江戸の町々に吹き荒れたインフルエンザやコロナウイルス除けの御呪いである。
「お染風」。そう名付けたられたのは、「新版歌祭文」に登場する、許婚がある身の
丁稚久松に、みさかいもなくコロッと惚れてしまい、あげく心中してしまう、すぐに
恋に感染してしまうお染ちゃんのような風邪、ということかしら。
「近代日本学術語辞典」によれば、お雇い外国人医学者として、東京大学医学部の基礎
を築いたドイツ人医学者ベルツが INFEKTION(インフェクチオン)を日本語で「感染
症」と訳したのは、歌舞伎好きだった翻訳官の司馬凌海(司馬遼太郎「胡蝶の夢」の主
人公・松本良順の弟子で語学の天才・伊之助)から「お染・久松」の物語を聞いたこと
がもとになっていた、とされている。
 感染、伝染、染色体など、もろもろの学術用語に「染」の文字が使われているのは、も
ともとは「お染風」、そのもとは「お染・久松」だったのだ。なるほどなあ。


 みなさんには、深川江戸資料館で撮影した「久松るす」の張り紙の写真を、葉書にして
お送りいたしておきます。玄関に張り出していただくと、新型コロナウイルスは侵入して
こない、霊験あらたかなありがたい御札となること請け合いです。
政府の対策より、効き目がありまっせ。

                          千葉の俳弟子 染々亭呆人


 で、愚生は送られてきた「久松るす」を御呪いとして、玄関扉に貼り付けておいたのだ。今のところは、霊験あり。なにしろ、日本は言霊の国である。 



撮影・鈴木純一「志村けんに笑いの極意見つけたり言葉は三分あとはバカ殿」↑

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