2014年10月5日日曜日
山根真矢「蟷螂は斧上げてより考ふる」・・・
山根真矢句集『折紙』(角川学芸出版)、句集名は、
折紙となる前は紙春疾風
からのものだろう。ここで脱線して言うのだが、最近の句集作りはどうもこうして画一的なのだろうと思う。帯の表はだいたいその句集序文からの抜粋(いわば推薦文のようなもの)で、裏はだいたいが自選句が10句ほど並べてある。
たしかに、これでその句集のほぼいい部分の全容が知れるのだから、有難い話には違いない。
しかし、反面それだけで、句集本体を読む必要がなくなってくる、という感想を愚生は抱いてしまう。
これに巻末の著者略歴をみれば、作者に対する謎はほぼ失われてしまうのである。文芸には謎も魅力のひとつだろう。まして作者の等身大の作品がそこに浮かび上ってくると、魅力もまたそこで多くは半減する。
以上のようなことは、むろん山根真矢にとっては関係ないことだから、近年の多くの句集に対する小生の愚痴と思っていいただいていい。
話題を転じて句集『折紙』についていうならば、「蟷螂は斧上げてより考ふる」を一に推したいところだ。斧を振り上げるのが勇ましいというのではない。わざわざ斧振り上げた後に考えるということを、何らかの比喩として読むこともない。いささかのかなしみがそこにある、と思うのみである。枯蟷螂ということもその先には待っているようにさえ思われる。またさらに、句の新味もある。蟷螂が考えるというなしぐさにはたしかに思い当たるものがありそうだが、それでも、句にこう詠まれたことはこれまでになさそうですから・・・。
ともあれ、愚生の好みのいくつかの句を以下に挙げておこう。
緑陰や声よき鳥は籠の鳥
名月や水無き川の砂流れ
瀬戸内は人容るる海波郷の忌
水の秋櫂もて岸を押してより
シュークリーム春の空気も入れにけり
門の内あれば外あり秋の暮
福島も桜紅葉のころならむ
オナモミ↑
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大井恒行さま
返信削除山根真矢です。
拙い句をお取り上げくださいまして、ありがとうございました。
攝津幸彦さん、ご存命なら67歳だったのですね…。
私は今日たまたま鴇田智哉さんの ぼんやりと金魚の滲む坂のうへ という句を読みながら、攝津さんの 露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな を思い出していたので、大井さんのブログで攝津さんと鴇田さんにも出会えて、不思議な感じがしました。
朝寒、夜寒の季節、お身体大切になさってください。