2017年11月16日木曜日

岩田由美「雲なしと思ふ待宵さしわたる」(『雲なつかし』)・・



 岩田由美第4句集『雲なつかし』(ふらんす堂)、帯には岸本尚毅の、ごくシンプルな惹句「いい句もある。」がいい。集名は、

  天窓の雲なつかしや避暑の宿   由美

からのものだろう。雲はさまざまに変容する。変転する。著者の雲にはそれぞれの愛着がたんたんとしてうかがえる。

  白き雲来て去る秋の神事かな
  鳥雲にもの皆花を急ぎつつ
  秋高し雲の映れる水に漕ぐ
  虹の色帯びて薄雲初御空
  雲なしと思ふ待宵さしわたる

収録句は、「平成二十二年四月から平成二十九年五月までの二百九十一句」(「あとがき」)とある
。読むにはほどよい句数である。ともあれ、以下に愚生好みの句を、いくつか挙げておこう。

  探りとる小銭冷たき小春かな
  恋ゆゑに世間が狭し花空木
  をりをりに飛ぶ蟬見えて蟬時雨
  天高し海ある方となき方と
  天高きまま満月の空となる




  

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