岩田由美第4句集『雲なつかし』(ふらんす堂)、帯には岸本尚毅の、ごくシンプルな惹句「いい句もある。」がいい。集名は、
天窓の雲なつかしや避暑の宿 由美
からのものだろう。雲はさまざまに変容する。変転する。著者の雲にはそれぞれの愛着がたんたんとしてうかがえる。
白き雲来て去る秋の神事かな
鳥雲にもの皆花を急ぎつつ
秋高し雲の映れる水に漕ぐ
虹の色帯びて薄雲初御空
雲なしと思ふ待宵さしわたる
収録句は、「平成二十二年四月から平成二十九年五月までの二百九十一句」(「あとがき」)とある
。読むにはほどよい句数である。ともあれ、以下に愚生好みの句を、いくつか挙げておこう。
探りとる小銭冷たき小春かな
恋ゆゑに世間が狭し花空木
をりをりに飛ぶ蟬見えて蟬時雨
天高し海ある方となき方と
天高きまま満月の空となる
0 件のコメント:
コメントを投稿