遠山陽子「弦」38号は、先般上梓された句集『弦響』の特集である。
角谷昌子、永島靖子、前田弘、春田千歳、安西篤、栗林浩らが執筆している。他に高橋龍と中村裕のエッセイ。
ともあれ、最後に「三橋敏雄を読む(1)」と題して、まず16句が取り上げられている。
「窗越し」の句については、
十五歳の少年の悲しみを覗き見るような一句だ。更に言えば、視覚対象物は焦点を絞って切り取ることによって、把握はより強くなるという俳句の骨法を、敏雄が本能的に心得ていたことに驚かされる。(昭和十年 十五歳)
と述べているが、編集後記によると、どうやら「敏雄百句を読む」の構想らしい。「
通読するとミニ敏雄論になるようにしたいと思っている」と心意気が書かれている。遠山陽子の情熱に敬服の念を禁じ得ない。
つれあひだつた男施設で死にき春 陽子 『弦響』以後
老人に老人の夢金魚玉
いなびかり父も柱も傾きぬ
晩年がもつとも長しちる公孫樹
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