『俳句新空間』NO.4、2015.夏号は、「鬼」と題する花尻万博の第2回攝津幸彦賞受賞後第二作の作品として「詩客」よりの転載作品。さらに筑紫磐井の「八月の記憶ー従軍俳句の真実」題する、この間の川名大とのやりとりが掲載されている。北川美美の編集後記には「『日盛帖』と名付けた作品詠に今号21名が参加」とあった。
その「日盛帖」の中から掲出した句が、大本義幸「三月の風よ集まれ釘に疵」の句である。直後の句にも「櫻三月死者たちは裸で歩く」が置かれているところをみると、東日本大震災についての詠とも読める。もちろんそうでなくてもよい。「釘に疵」が普遍性を獲得していよう。
「日盛帖」参加者の中から、一人一句を・・・・
痴呆って症なのかしら琵琶熟れる 網野月を
わたしには声がない世界がみえない 大本義幸
願ひ事書いて燃やされ雲の峰 神谷 波
藤の昼銹びしらんぷを地に置きぬ 坂間恒子
いをかはづ降つてうるほふばかりなり 佐藤りえ
くちびるにきんぎよのおよぐばすつあー 田中葉月
風雨はげし骨離れよきほつけ食ひ 津髙里永子
虹描く縄跳びの子ら基地超えて 豊里友行
光化学スモッグの中誰もが汗 仲 寒蟬
傘さして道遠くせり夏木立 中西夕紀
田一枚植ゑて立ち去る柳かな(山の裾まで燕追ひきて)
懲役の無期が有期に麦の秋 夏木 久
生意気な目鼻となりぬ烏瓜 秦 夕美
戦没の墓の月日や苔の花 福田葉子
沢胡桃支那胡桃梅雨晴れ間 ふけとしこ
戦前はいつの戦後ぞ養花天 堀本 吟
曇天の残響豊か囀れる 前北かおる
雨おとこ祭囃子を雨に乗せ 真矢ひろみ
晩夏光ガラス細工の象溺る 渡邉美保
ハクイキガ ホタルビトナリ ハハキトク もてきまり
死に顔のまま生きてゐる上司・部下 筑紫磐井
梅干しの肉こそよけれ旅人よ 北川美美
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