2017年12月30日土曜日
西村麒麟「鳥好きの亡き先生や冬の柿」(『鴨』)・・・
西村麒麟第二句集『鴨』(文學の森)、帯には第七回北斗賞受賞とある。この北斗賞には少しばかり感懐がある。偶然だったが、表向きは清水哲男顧問との交替しての入社になった(入社前日に清水哲男から吉祥寺のライオンでレクチャーを受け、哲男さんの2年半の在職期間の長さだけはクリアーしようと思いながら、結果的に愚生は4年間務めた・・・)。その最初の仕事として、社長・姜琪東の下命によって、「俳句界」新人賞に相当する企画を出せということで、40歳までの人で、既発表可の150句を応募良くその企画が通り、北斗賞は第一回の川越歌澄から、堀本裕樹、髙勢祥子、鈴野海音、藤井あかり、抜井諒一、西村麒麟など、活躍著しい俳人を生み出してきている。
今年第8回目は、「俳句界」12月号の速報によると、堀切克洋「尺蠖の道」(選者は横澤放川・鳥居真里子・山本素竹)である。堀切克洋には「豈」60号に、特集「平成29年の『俳句界』」に「俳句における〈十九世紀の罠〉」という犀利な玉文を寄せていただいていた。
北斗賞の企画のそもそもは、愚生が若かった頃を含めて、若い人達には句集を出したいと思っても、多くが自費出版であって、それだけの資金や蓄財などない若者には、句集を無料で出せ、作品を世に問うことができるというのは、実力で勝ち取れる賞としては魅力があるのではないかという発想だった。愚生の退社後もこうして継続し、しかも有能な俳人の文字通り登竜門となりつつあるのは嬉しいことだ。
ともあれ、『鴨』よりいくつかの句を以下に挙げておこう。
山動く飯田龍太の忌なりけり 麒麟
ぷつぷつと口から釘や初桜
二人ゐて長さの違ふ蠅叩
夕立が来さうで来たり走るなり
向き合つてけふの食事や小鳥来る
露の世の全ての露が落ちる時
鶴鳴くやどの名で呼べど振り向かず
ぼうふらの音無けれども賑やかな
墓石か石碑か秋草の中
少し欠け好みの月や玩亭忌
蔵一つ凍らせて行く雪女
西村麒麟(にしむら・きりん)、1983年、大阪市生まれ。
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