「海原(KAIGEN)」創刊号(2018・9月号、海原発行所)、安西篤「『海原』創刊の辞ー俳句形式への愛を基本とし、俳諧自由の精神に立つー」によると、
「海原」発足の方針は、すでに「海程」一月号において発表され、二・三月号において「海原」の理念は「海程」創刊時のものを踏襲していくことを表明しました。即ち、①俳句形式への愛を基本とし、②俳諧自由の精神に立つことであります。これは兜太先生が海程創刊時に打ち出された理念でありますから、この原点に立って「海原」は「海程」の歴史を受け継いでいくことに他なりません。先ずは先生の衣鉢を継ぎ、今後「海原」の成長過程の中で、時代に即応した体制整備を皆さんとともに築いてゆきたいということです。(中略)
新「海原」は主宰誌ではなく代表制とし、「海程」創刊時と同じような同人誌形式とします。当面執行部の体制は、代表・安西篤、発行人・武田伸一、編集人・堀之内長一(副編集人・宮崎斗士)のトロイカ方式で参ります。発行所は武田伸一宅となります。(中略)
私たちは、これから「兜太以後を」担っていかなければなりません。差し当たり「海原」の未来は、ポスト金子兜太五年間の帰趨が鍵を握っていると思われます。幸いにして海程人の多くは、「海程」のこれまでの絆を「海原」においても活かしたいと考えているようです。(中略)この機を逃さず、「海原」の基礎固めをしてゆきたいと願っております。
と記されている。誌面の構成などは、ほぼ「海程」を継承している。「編集後記」にも記されているが「同人作品五句の迫力。三句のときとは違う存在感に思わずも目を見張ってしまったのである」(堀之内)とあり、その通りだとおもった。その同人欄「碇の衆」「光の衆」「風の衆」「帆の衆」を一読するだけでも、愚生は意外に多くの方々の知遇を得ていたのだと、改めて気づかされ、これまでの厚情に感謝し、かつ今後の奮闘に期待したいともおもったのである。そのすべての方々の句を挙げるスペースを有していないので、ここでは「海程」時代からの古参同人「碇の衆」の一人一句を以下に挙げておきたい。
生涯現役生涯少年春の人 安西 篤(武蔵野抄1)
一つとや人と兜太とくちなわと 武田伸一(雜雜抄1)
陽炎児童後から陽炎老婦人 加川憲一
水温む鎖解れぬ被曝の地 鈴木八̪駛郎
困民党語り兜太師秩父夏 舘岡誠二
よだれ掛け前掛け共と朧なる 佃 悦夫
惜春の暦に誑かされてばかり 中村ヨシオ
韋駄天や髪ざんばらに樗の実 福富健男
青葉若葉の切っ先が今朝喉元に 堀之内長一
夏日ぎらぎら乱反射して沖縄よ 前川弘明
ガザの下この一本の日傘かな 森田緑郎
海原や九月の太陽が浮いた 山中葛子
愚生は、記事中、この他に、「豈」同人の堀本吟が山本掌句集『月球儀』の評を「月面の〈存在(ザイン)-地上の『虚無』」と題して執筆しているのに目をとめたこと。そして、また、これも贔屓にすぎないのだが、遊句会でご一緒させてもらっている会友作品「海原集」よりお二人の句を挙げておきたい。
母の日や母とならざる娘の日記 たなべきよみ
母の日や母亡き古稀を過ごしおり 武藤 幹
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