2021年9月18日土曜日

大野今朝子「箱庭に戦車も壕も傷兵も」(「甲信地区現代俳句協会・第34回紙上句会結果発表」)・・・


  「甲信地区現代俳句協会会報第98号・第34回紙上句会結果発表」(甲信地区現代俳句協会)、その後記に、


  コロナ禍のもと、昨年に引き続き今年度も吟行会が開ける状況には至りませんでした。唯一の事業として通信による紙上句会が行われ、結果を本号に掲載いたしました。(以下略)(一志)


 とある。ブログタイトルにした大野今朝子「箱庭に戦車も壕も傷兵も」は、愚生が特選に選んだ句である。また、入選に選んだ2句は、


  夏祓森に木の声鳥の声       関 道子

  麦星の光の雫飲み干さむ     岩井かりん


であった。特選句に対する愚生の評は、


 (前略)特選にした句の「箱庭に」は、もはや脳裏に刻まれた記憶の光景の謂いではなかろうか。でなければ、もともとが、山水、名勝地を模した風流の慰みであった「箱庭」に、わざわざ戦場という宇宙を映しだすことはしない、といささか勝手な読みをしてみた。「箱庭」が歳時的に夏のものであれば、なお、そこに込められた戦場の光景は様々な思いを喚起させる。


 と記した。ともあれ、以下に、各選者の特選句を挙げておこう。


  蟬の去り己を探すごとき木よ     原田宏子 (秋尾敏選)

  風草のささやきばかり君の死後    小林貴子 (神野紗希選)

  変りゆく己が顔(かんばせ)梅雨穂草 堤 保徳 (宮坂静生選)

  鵼鳴くやとりとめもなき自画自賛  高橋佳世子 (城取信平選)

  論語喰らひ頭でっかの紙魚走る    宮坂 碧 (中澤康人選)

  滝落ちて一途に森の黙を解く     小澤斉子 (佐藤文子選)

  箱庭に戦車も壕も傷兵も      大野今朝子 (小林貴子選)

  八月やマンゴー色の灯が点り    一志貴美子 (窪田英治選)

  八ヶ岳岸壁に干す登山靴      斉藤文十郎 (島田洋子選)

  楸邨よ兜太よ蟇の聲ひびく     西村はる美 (久根美和子選) 



 撮影・鈴木純一「フェンスから出ちゃ駄目ふうせんかづらでしょ」↑

0 件のコメント:

コメントを投稿