「花林花 2022」Vol.16 (花林花俳句会)、特集は「俳人研究 石田波郷」である。愚生は、かつて、解放出版社の土方鉄著『石田波郷伝』を読んで、唯一、波郷の反戦意識に触れた書として、感銘したことがある。それもあって、波郷「霜柱俳句は切字響きけり」の句も多くの俳人が流布しているような韻文、切字主張とは別に考えていることは、これまでも言ってきたつもりである(句の発表時の背景を指摘して・・)。 他の記事としては「花林花の作家 その十 原詩夏至」について、高澤晶子は、冒頭、
原詩夏至は、俳句は元より、短歌・俳句・小説・評論のジャンルでも、その才を十全に発揮している表現者である。論ずるに当り、原の著書や関連資料に事欠かないが、この作家論では、提出された自選百句のみを対象とするものである。
と述べ、その結びを、
詩夏至俳句は具象に優れ、その句意は明快である。その時空間軸は世界に偏在し、対象は変幻自在である。詩夏至にとって創作活動は息を吸って吐くような自然の営みである。だから燃え尽きることもなければ、枯れることもない。視野は360度と言ってもいいだろう。
鳥類は頭を殆どあらゆる方向に向けることが出来る。彼らは授かった美しい声で朝の歓びを歌う。詩夏至の身体を奏で、人間の歌を歌わせるのは、空の一片の雲や風に揺れながら草が撒き散らす光の粉である。
俳聖は旅に雀は蛤に (愚生注:詩夏至)
と記している。因みに、原詩夏至は、1964年東京生まれ。ともあれ、以下に本号より一人一句を挙げておきたい。
ヒトという健気な命露時雨 高澤晶子
烏瓜夜ごとの花は未完の詩 廣澤田を
恐ろしき峠を越えて薄原 榎並潤子
逃げる背に驟雨の街のかぶさりぬ 石田恭介
糸トンボそれほど空爆がしたいのか 金井銀井
不意にこゑして深秋の鳥の檻 原詩夏至
木洩れ日を光の穴と蟻の行く 鈴木光影
礎(いしじ)に名増えおりて今日沖縄忌 島袋時子
初時雨その後訃報の続きをり 福田淑子
立ち漕ぎで登る坂あり夏の雲 宮﨑 裕
土筆狩スカイツリーも10cm 杉山一陽
にじゃりじゃり雨のたっぷり春の土 内藤都望
撮影・芽夢野うのき「花の森迷い込んだり鳥戦士」↑
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