荒井芳子句集『柚の蕾』(文學の森)、集名はかの古沢太穂に評されたという、
ふくらみてふくらみきりて柚の蕾 芳子
からの命名である。「道標」、「新俳句人連盟」ひとすじらしいから、社会詠に真骨頂があろうかと想像したが、自然詠も率直でいい。それは、
諸角先生は常々「対象をよく見る」「把握した対象を身体に浸透させてから表白する」「感じる」そして必ず「勉強しなさい」とおっしゃいます。高齢となり少しづつ薄れ行く感性に、きつい坂を登る苦しさを覚えますが、希望を失わず進みたいと思っています(「あとがき」)
と書かれていることが、日々修されているからだろう。そして諸角せつ子の序句は、
米寿いま柚子の実あまた芳しく せつ子
ともあれ、いくつかの句を以下に挙げておこう。
ひらがなで「へいわ」と書く子流灯会 芳子
藁塚(にお)
棚田このこの島かくれきりしたん
非武装地帯板門店に萩こぼれ
七日数えて大屋根の雪痩せにけり
父親に抱かれて遺影卒業す
瘤抱いて天空に枯れプラタナス
冬天へ赤芽ふやしてブルーベリー
荒井芳子、1928年、栃木県生まれ。
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