2016年3月15日火曜日

酒井弘司「冬満月裏山おうと歩きくる」(「朱夏」125号)・・・



今号の「朱夏」は「豈」同人の秦夕美「香と彩とー『朱夏』124号を読む」と筑紫磐井「十代少女のライバルは九十六歳翁」の両名が健筆を奮っている。特集は幼稚園から俳句を作ったという飯田香乃句集『魚座のしっぽ』。筑紫磐井の他には米山幸喜、内野修、八木忠栄などがあたたかい鑑賞を行い、新聞などからの採録は長谷川櫂、坪内稔典と好意のものばかりである。
その他では、愚生より、年齢はほんのわずかばかり若いと思える清水滋生のエッセイ「わたしの一句ー酒呑童子の夢」は、どこか切ない、失われた青春回顧の趣がある。

    音楽が途切れ酒呑童子の夢から醒め      滋生

因みに飯田香乃の今号の作品から、

   どの人の顔も明るい初日の出           香乃
   福袋あける楽しみ胸さわぐ
   通学路コートの衿をかきよせて

最後に秦夕美の一文を以下に少々引用する。

      八月の黙契海と火と飢えと        川嶋隆史

 八月は死者の月。ある年齢以上の人にとって、観念ではなく、細胞に刻み込まれている。
それが「黙契」なのだ。この言葉の重さをどれだけ受け止められるか。



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