加藤耕子第7句集『空と海』(本阿弥書店)。句集名にちなむ句は、
汗の身とひとつひかりに空と海 耕子
昭和6年、京都市生まれ、とある。「雨滴会」草間時彦に師事したともあって、当然のこととはいえ、時彦忌を修した句が多く目を引く。草間時彦といえば、「冬薔薇賞与劣りし一詩人」などのサラリーマン俳句や、あるいは「甚平や一誌持たねば仰がれず」などの諧謔のきいた句が有名だが、愚生にとっては俳句文学館の設立に尽力し、館長就任の際には、結社「鶴」を辞して無所属になるという身の処し方に、草間時彦の信頼に足る生きざまを思ったりしたのだった。たしか最後の句集で蛇笏賞を受賞したのだが、授賞式直前に亡くなり、出席叶わなかったように記憶している。
悼 草間時彦先生(平成十五年五月二十六日)
魂離るこの世に瀧の音残し 耕子
ゆつたりと召して居られし白上布
忌を修すほたるぶくろを風に吊り
時彦忌 鎌倉
切り岸に楝の花のけぶりたつ
海近き時彦の山新樹光
薔薇垣に薔薇の百花や時彦忌
時彦忌 逗子
葉桜や雨のきらひな雨男
墓参かな楝の花に会ふことも
鎌倉は雨またよけれ額の花
さらにHAIKUにも熱心に取り組んでいる加藤耕子は「あとがき」に以下のように記す。
ウクライナの小学校の教科書には、シェイクスピア、ゲーテと並んで芭蕉が世界の三大詩人の一人に取上げられています。東洋の、日本の文化の奥深さと同時に世界の人々の指針ともなるべき俳句・HAIKUのもつ精神力、物の見方、詩型の確かさ、短い故の言葉の力を強く思った次第です。
最後にいくつかの句を挙げておこう。
花合歓といふにはあはきうすみどり
冬籠砦囲ひに物を積み
老鶯やかつて隠田いま捨田
雲を出し満月にして月の触
長崎忌朝倉和江被爆の日
枯葦に金の日雫雨あがる
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