加藤哲也第二句集『美しき尾』(角川書店)の集名は、
初糶や美しき尾を見初めたり 哲也
の句に因むものだろう。櫂未知子の跋文には、
彼の作風はいわゆる伝統的な俳句の作り方とは少し異なっているといっても良いかもしれない。その句がうまいか下手かといった次元を超えた、彼独自の視点による素材の切り取り方といおうか、とにかく意表を突く内容を見せてくれることが多い。(中略)
こういった作風は時に誤解されるであろうし、理解されない事態を招くこともあるだろう。しかし、自分を信じて、加藤哲也らしい作品を一句一句刻んでいって欲しい。いつか、多くの俳句愛好者が、あなたの名を口々に叫ぶ日がくるはずだ。
とある。
戦争と平和の後の昼寝かな
の句には、余談だが、三橋敏雄を想起したくらいだった。偲ぶ・三橋敏雄と前書があったら絶対にそうだと思わせただろう
。
ともあれ、いくつかの句を挙げておきたい。
新緑を傷口に入れがたき日々
公魚の貌を揃へて売られをり
端居してだんだん宙へ行く身なり
影といふもののはじめや初明り
こひねこのねこからいうたいりだつせり
逃水やこともあらうに雑踏へ
大日本帝国の如麦の秋
一斉といふ空爆のあり虫時雨
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