瀬戸正洋(せと・せいよう)、1954年神奈川県生まれ。句集『へらへらと生まれ胃薬胃腸薬』(邑書林)は一句が句集名になったような句集だが、ひょっとしたら句集名の句が一番よいのではないかと思ったりする奇妙な句集である。
それを帯では、
不条理で荒唐無稽な現実に流され、/理不尽な社会を泳ぐしかない正洋の俳句が蔵す、/遣り切れない切なさに気付いた時、/この本を/メランコリックな気分で読むのもありだろう。/いいや、それでも笑ってしまう?/それも正解。/俳句は決してお行儀のよい文学なんかではない。
と惹句されている。
本文は最近では珍しい一ページ一句立て。序文も後書もない、実にシンプルないでたちである。しかも、一気に読むには手ごろの200句。
以下にいくつかの句を紹介しておく。
鯨の酢味噌和議論から口論へ 正洋
蒲公英や爆発しない手榴弾
にんげんはゆつくり生きる油照
七五三、健康、幸福、そして「運」
明易し金庫に金の無かりけり
常連の店はわがまま初鰹
優曇華や朝昼晩と飯を食ひ
夏夕べ過去よりシュプレヒコールかな
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