『自註現代俳句シリーズ・山本つぼみ集』(俳人協会)は、著者自選300句に自註を付したシリーズの一冊である。引用する。
ひた枯れて風よりほかは棲めざりし 平成元年作
相模野はすっかり都市化した。わずかに残った面影
をのこす公園も枯れ一色。大山颪が容赦なく。
旅のまちかど芯まで燃えてななかまど 昭和五一年作
北海道への旅は土岐錬太郎師恋いの旅、さらに
「アカシア」誌友との交流がある。ななかまどの実が
真赤な街路樹の町。
ときには青のみの余韻に虹澄めり 昭和五九年作
飯田祐見子は城太郎師の一番若い弟子で、美しく
聡明な女性だった。白血病で私の勤務する病院に
入院していた。相寄って句集『虹』を上梓した。
土岐錬太郎師とは、北海道・新十津川の僧侶で、日野草城に師事、「アカシア」を創刊、八幡城太郎、小寺正三、楠本憲吉、桂信子なども参加した。城太郎師とは、八幡城太郎、相模原市の名刹青柳寺の住職。1953年に「青芝」を創刊主宰した。『現代俳句大辞典』・伊丹啓子の解説には「新興俳句の系譜を引き、清新な生活感情をうたうことをめざす」とある。城太郎亡きのち、山本つぼみは、市川愁子とともに副主宰を務めた。
以下は、同集より、句のみ。
猛き夏心よわりをみすかされ 昭和49年作
ははも父も雪の戒名雪に眠る 昭和55年作
敗戦忌骨(こつ)なき兄の六十年 平成一七年作
戛々(かつかつ)と軍靴脳裡に八月忌 平成二五年作
衣更ふ尺度合はざる世の隅に 平成二六年作
山本つぼみ、1932年、神奈川県生まれ。
今夜の月↑
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