2018年7月21日土曜日

村山栄子「馬の名はマルク・シャガール冬薔薇」(『マーマレード』より)・・

 

 村上栄子俳句とエッセー『マーマレード』(創風社出版)、書名の由来については著者が、

 幸せをかたちにすると、あの「マーマレード」のような色つやでは、と思っていることから。

 と記している。因みにマーマレードの句もいくつかある。

   バター派とマーマレード派柿若葉      栄子
   小鳥来るマーマレードの壜は空
   希望とはたとえば冬のマーマレード
   
 そして、本書には、扉に次の献辞がある。

   この本を亡き友、奥本郁子さんに捧げます 

 本書中「夾竹桃」のエッセイにはとくに惹かれた。

 「六二三、八六八九八一五、五三に繋げ我ら今生く」。
 朝日歌壇賞を受けた西野防人さんの一首だ。六月二十五日の朝日新聞コラムには「八六と八九は広島と長崎に原爆が投下された日、八一五は終戦、五三は新憲法施行の日と分かった。では冒頭の六二三は・・・・。」と言葉が続く。(中略)
 昭和五十年前後の大学生活。平和記念公園にも何度か足を運んだ。公園の横を流れる本川。その両岸に七月頃になると白やピンクの、また真紅の美しい花が咲く。九月ごろまで咲き続ける。
 原爆の焦土にいち早く咲いた花として知られる夾竹桃。ピンク色が目にしみる。

 六二三とは、昭和二十年六月二十三日、本土決戦にいたる前、沖縄での地上戦が終結した日、沖縄慰霊の日である。敗戦日8月15日のほぼ2ヶ月前。ともあれ、集中よりいくつかの句を挙げておこう。

  春立つ日貫之が来て万智ちゃんも
  ペットなんてやってらんねぇ恋の猫
  いつの日かこの虻のひとつがワタシ
  緑さす八幡さまの文庫かな
  新茶汲む母のま白き割烹着
  恋人は時にたんぽぽ時に犀

 村上栄子(むらかみ・えいこ)、1953年、兵庫県生まれ。

        

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