2016年2月3日水曜日
小池正博「言い寄られ二つの口を見せておく」(『転校生は蟻まみれ』)・・・
句集名『転校生は蟻まみれ』(編集工房ノア)は、章名ともなった次の句から、
都合よく転校生は蟻まみれ 正博
実は愚生にはほとんど川柳を読む能力が無いのか、この句がよく読めない。
さまざまなキーが隠されていて、そのキーの元となる何かを知っているか、つまりその句の前提となる知識(前句らしきもの)が無いとよく腑に落ちないのか。それともまさにシュールな絵画でも観るように、転校生が蟻にたかられ、蟻まみれになっている状態を想像すればよいのか、なかなか、都合よくはいかないのである。
蟻→在り?・・都合よく、あり?まみれ、なのでしょうか。書名にするくらいだから自信作、評判のよい句にちがいない。いずれにしても、一句は比喩的に語られるのだろうか。
著者は「あとがき」に、そのありどころを以下のように記している。
「川柳」とは何か、今もって分からないが、「私」を越えた大きな「川柳」の流れが少し実感できるようになった。けれども、それは「川柳形式の恩寵」ではない。「川柳」は何も支えてくれないからだ。
見事な覚悟のようにも思える。愚生も言いたい。「俳句」は何も支えてくれない。断じて「俳句形式の恩寵」などどこにもない。それにしても多くの俳句には俳句形式が覚えている手が書かせている作があふれている。
ともあれ、門外漢ながら、愚生が期待している小池正博のいくつかの句を挙げておこう。
右手と右手つないで登ってゆく
聴許視許触許黙許特許局
煉獄へ鮭は帰ってくるはずだ
戦争に線がいろいろありまして
逢うときは蘭中鋳になるエチケット
反復はもうしなくてもいいのだよ
辻斬りの相手は弱くていいのです
ライオンが捨てられている花の岸
蘭亭の葉のかたちなど知らないよ
法王はいろんな管をもっている
見上げれば空に背骨がないことも
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