2016年11月18日金曜日
西村智治「震災の後の真水を身に通す」(『砂川』)・・・
西村智治20年ぶりの句集『砂川』(現代俳句協会)、集名について「あとがき」には、
砂川というのは、立川市の一地名であり、小生の普段の活動域の大部分を占める地域である。いろいろな物を背負っている地名で、句に何かを足してくれぬかと、句集名にしたとある。
集中の句では、
砂川は物陰多き花臭木
愚生の年代の者には砂川といえば基地反対の砂川闘争である。ただ、本句集にはそうしたことは表に出てこない。むしろ圧倒的に多いのが陶器に関する句と猫に関する句である。古美術への関心は並みではなさそうだから、陶器に関しては収集家なのかも知れない。
古唐津のなか長月をさがしおり 智治
水引にかなう備前をさがしおり
織部買いて冬の河原へ出て帰る
斑唐津のなか冬枯の野がありぬ
冬の日の昏がてに置き井戸茶碗
信楽にエノコロ草の素を活ける
伊賀焼の緑寂寥のごと流る
黄瀬戸より雨の香のして夏果てる
サンキライ益子の秋を深めけり
秋風が今ここを過ぐ根来碗
まだまだ多くの陶器俳句があるが、引用はこれぐらいにして、興味と趣味のある向きの方々は句集を手にされるがよい。
陶器俳句のみをあげては失礼なので、他のいくつかの愚生好みの句も挙げさせていただく。
青唐の苦み昭和と生きてきて
えごの森言葉を固くしておりぬ
春愁を展げて春の大河かな
籐椅子にまぼろしの棲む屋敷かな
いちょうもみじ生ぐさく青残りけり
寒林を透明あふれだしにけり
西村智治、昭和27年、東京中野生まれ。
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