2016年11月25日金曜日
萩山栄一「背伸びしてコツンと月にぶつかった」(『不思議の国』)・・・
萩山栄一句集『不思議の国』(文學の森)、彼の生まれは、愚生よりちょうど十年若く1958年、静岡県生まれ。現代俳句協会青年部創設のまもない初期に知り合った。「豈」の同人である。一時期休俳の苦しい時を過ごしたようだが、近年の彼の句は進境著しいと思っていた矢先、句集が届いた。そのことは、田中陽の懇切な跋に以下のように記されている。
ともあれ、萩山にとっておもしろくて仕方がない俳句ーその集積がここに世に出ることの意義は大きい。もしかして著者には”口語俳句第二の出発”の旗手を期待してよいのかもしれない。
本句集の巻末あたりに、二編のエッセイ「沖縄」と「タイムマシンーH・G・ウェルズ」が収められているが、いずれも教師(人間)としての誠実さにあふれている。後者の最後に付された句は、
資本主義 池面(いけも)の獅子の舌なめずり 栄一
ブログタイトルにあげた「背伸びしてコツンと月にぶつかった」の句には、稲垣足穂の「星と月のお話し」を思い出したりした。
あとがきとおぼしき「終わりに」に、「亡き父母に対する追悼句集である」とあり、また、以下のような言挙げも記されている。
さて、詩(もちろん俳句をふくむ)は日常の中に、言語を手段として、非日常的空間を創り出す営為だと信じている。詩の起源である、祝詞・叙事詩がそうであるように、俳句という形式はそれが可能である。つまり私が俳句によって表現したいのは、「現代の神話」だ。そのように読んでいただければ幸甚である。
ともあれ、いくつかの句を挙げておきたい。
夜の吹雪空は剥落(はくらく)し続けて 栄一
八百万の神の手見えて大焚火
ジグソーパズルの最後のピース梅雨明ける
あくまでも黒い太陽大津波
手に持って投げる石ころお菓子になあれ
苺つぶす「ヒトヲコロシテミタカッタ」
太陽の最後の色で柿落ちる
怒濤から七色の竜昇天する
コウテイダリア↑
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