2016年11月9日水曜日
福島泰樹「テナーサックス吹いていたっけ泣いていた煤けてしまった想い出のため」(『哀悼』)・・・
福島泰樹第29歌集『哀悼』(皓星社)、いつものことながら圧倒的に死者に捧げられている歌で構成されいる。ブログタイトルにした歌は詩人諏訪優にまつわる第Ⅱ章に収められ、前書のある、
日暮里ジャズ喫茶「シャルマン」にもよく行った
テナーサックス吹いていたっけ泣いていた煤けてしまった想い出のため
とある歌である。そして愚生の買った歌集の見返しに揮毫された歌は、たしかに上句は同じだが下句は以下のように記されている。
テナーサックス吹いていたっけ泣いていた煤煙けむる俺のブルース
もちろん、揮毫する時、瞬時に改作されたであろうこの歌の方が愚生の好みだ。
愚生の第二句集『風の銀漢』(書肆山田)の跋文は清水哲男とともに福島泰樹にしたためていただいた。もう31年前のことだ。想い出に捧げる歌を一首。
愛憐の果てにはだかる闇やあるヤスキ・フクシマ汝れが跋文 恒行
ともあれ『哀悼』の数首を愚生好みで挙げておきたい。
諏訪優
大給坂藍初坂(おぎゅうざかあいぞめざか)やのぼりゆく血を滲ませたようなたそがれ
あの子の体
飲んだゲキヤクで真青だよ
青酸のカリ活用 と笑いしは戯れならず死んでゆくため 泰樹
五七五、十七音で述べるならなんともつまらぬ風の夜となる
生存のために戦ううるわしく死んでいったと人に告げるな
マスクして歩くは風邪のためでない虚無の唇ひらかないため
誰一人死んではいない追憶の戦列なれば凛々しくぞ咲け
歌集『六月挽歌』がこころに沁みてならない
感傷ゆえに時間を迂回してたちのぼりゆく映像はある
一条さゆりを君は歌った
一条さゆり樺美智子や同い年、盧溝橋事件の年に生まれき
サザンカ↑
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