2018年3月28日水曜日
金子兜太「人体冷えて東北白い花盛り」(「俳句界」4月号より)・・
「俳句界」4月号(文學の森)は、緊急に「哀悼 金子兜太」を特集している。去る2月20日に98歳で亡くなったばかりで、月刊俳句総合誌ではもっとも早く、追悼特集を組んでいる。そのため、さすがに「俳壇から~追悼文」には宇多喜代子、宮坂静生、稲畑汀子、有馬朗人、安西篤などの重鎮の俳人からは電話取材によって編集部がまとめていて、(聞き取り)と註が付されている。その他、山本安見子、黒田杏子、高野ムツオ、大牧広、石寒太、武田伸一、塩野谷仁、宮崎斗士、田中亜美、中内亮玄、五島高資の各人も二、三日ほどで至急の原稿をまとめたと思われる。一時代前のフレーズだが、まさに巨星墜つ!の印象である。
愚生は、若き日、向こう見ずに「金子兜太の挫折」の一文を「俳句研究」誌に草したことがあったが、常に俳句の目標たるべき、乗り越えるべき俳人として、大きな壁として視野の中に入っていた俳人の一人であった。そして「俳句空間(第8号)」誌では、平成時代幕開けの特集「さらば昭和俳句」へのインタビュー(対談相手は夏石番矢)の企画を、二つ返事で応じていただいたことを思い出す。昭和が尽きる直前から平成元年の発行だから、30年近く以前のことになるのだ。また愚生の非力で実現の叶わなかった「金子兜太読本」(邑書林版)では、安西篤、武田伸一両氏に多大なお会世話になりながら、ついにその恩を返せないでいる。9年前から数年「俳句界」顧問として働いていたときには、「兜太ばかりがなぜもてる!」の特集を含め、兜太邸にも伺わせていただいたり、随分と世話になった。
それにしても金子兜太の晩年は俳人というより、「俳人九条の会」など、ある種の平和運動への貢献度において計り知れないものがあった。
以下には、「俳句界」4月号の中から、兜太追悼の句を挙げておきたい。
班雪嶺のあなたへ魄の途(みち)ひかる 宮坂静生
他界ありまた師にま見ゆ春もがな 安西 篤
あと一つ、同号の「北斗賞受賞作家競詠」から一人一句を以下に挙げておきたい。「北斗賞」は、愚生が文学の森に入社したとき、最初に社長・姜琪東に命じられて企画創設なった思い出深い賞でもある。授賞作を句集にして一本にする(既成作品応募可)ことで若い実力ある俳人を鼓舞することが目的だった。
胸に抱く子と春眠をわかちあふ 堀切克洋
春の夜やたつぷり母を湯灌して 西村麒麟
軒下の軍手凍つてをりにけり 抜井諒一
からうじて現となりぬ冬の蝶 藤井あかり
写真家の大きなリュック水温む 涼野海音
たくさんの指を集めて春の嶺 髙勢祥子
しんしんと古びゆく身や花筵 堀本裕樹
牡丹に芽魔法使ひにおのが杖 川越歌澄
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