2018年3月3日土曜日

石田恭介「揚雲雀真昼の淵にとどまりて」(「花林花」第12号)・・



 「花林花」第12号(花林花句会・代表高澤晶子)の特集「花林花の作家 その六」は「石田恭介自選百句 2010年~2017年」、高澤晶子「光のファイターー石田恭介論」によると、自選百句といいながら、100句に一句足りない99句しかないのだそうである(愚生は数えず)。そのⅤにあたる「幻視行ー追慕」に上げられた5句を評した部分、「残されし母と吹雪の夜に入る」「さびしさを重ね着にして母眠る」「雪しまく寝台の母の幻視行」について、

 〈吹雪の夜〉の句では、〈残されしが〉が〈母〉に掛かるのか、〈残されし〉で切れが入り主語は作者であるのか、二通りの読みが可能であるが、いずれにせよ母子は一体である。〈母眠る〉〈母の幻視行〉は恭介の深い眼差しが感じられる。秀句であるが、それ以上の鑑賞を拒絶するように屹立している正に「俳句」そのものである。

 と、高澤晶子の俳句観を述べるように記されている。愚生の好みの句をいくつかを以下に記すと、

  墜ち蟬の投げ上げられて宙がえり     恭介 
  教室を逃れし先の青田風
  改札へ押し寄せてくる涅槃西風
  春嵐証明写真五百円
  春浅し高きに鳥のすみかあり
  光など風の透き間の遺失物
  身をなげし者に長らく汽笛冴ゆ
  神無月銃撃も空爆もある

 石田恭介、1947年山形県米沢市生まれ。
 ともあれ、「花林花」今号よりの一人一句を挙げておこう。

  水を買うことにも慣れて原爆忌     高澤晶子
  病室の大窓西日逃れ得ず        廣澤一枝
  草の春声には出せぬ革命歌       石田恭介
  桜散るみんな居たのかこの星(おれ) 北山 星
  覚めかけてこの世の蒼さ冬霞      榎並潤子
  妊婦そろりその母そろり秋祭      金井銀井
  つれあひは詩商人なりつづれさせ    木津川珠枝
  花遍路降りかかるもの掌に受けて    狩野敏也
  御顔(みかほ)ほぼ無し炎天の石仏   原詩夏至
  春雨の宙(そら)の真中に止みにけり  鈴木光影
  パイナップル甘い香りや故郷の     島袋時子
  白映えやポストに友の遺稿集      福田淑女
  クレヨンの空色折れてこどもの日    宮﨑 裕
  


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