仙田洋子第四句集『はばたき』(角川書店)、集名の由来については、著者自身が、
今回の第四句集には、基本的に二〇〇五年から二〇一二年までの作品を収めた。『はばたき』という句集名は、二〇〇五年から愛すべきインコ達が家族に加わったこともあり、また毎日のように庭に野鳥達が来てくれることもあり、〈はばたきに耳すましゐる冬至かな〉からとった。
と、記している。また、「あとがき」後半になると、
穏やかな時間が流れているように見えながら、人生の地雷は日常生活の何処に隠れているかわからない。「銀貨」の章の〈友よかの世の空も夕焼けてゐますか〉以下六句は彼女を悼んで詠んだ夥しい数の句から選んだものだが、どれだけ言葉を尽くしても、どれだけ空を仰いでも、友を蘇らせることはできない。
と、悲痛に語っている。愚生より一回り以上若い仙田洋子にも、禍福を含めて、人生の巡り合わせが訪れているのだろう。帯の惹句には、
前句集から11年。ユーモアと独自の眼差しで詠んだ、詩情と愛が溢れる珠玉の作品集。
とある。それでもまだ、本集には収録されなかった2013年以後の句が多く残されているようだ。刊行が待たれる。ともあれ、以下に愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
白鳥の首よこしまな曲りやう 洋子
背泳ぎのひとかきごとに曲りけり
海鼠らのじつと開戦前夜かな
たんぽぽを摘みためて母訪ねけり
秋の暮足遅き子はさらはれて
綿虫のなきがらを見ることもなし
うすものやくるみ殺すといふことも
くすぐつてあやしてからすうりの花
戦没の手のからみつく浮輪かな
鍵盤に並べなら・かし・くぬぎの実
悼・脇祥一さん
花八手よりもしづかに逝かれけり
初明り死にたての死者手を挙げよ
虹二重てふてふには遠すぎる
冬桜涙だんだん大粒に
仙田洋子(せんだ・ようこ) 1962年、東京都生まれ。
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