2022年2月26日土曜日

武藤幹「墓仕舞い決めた数の子噛みながら」(第34回・メール×郵便切手「ことごと句会」)・・

 

 第34回・メール×郵便切手「ことごと句会」(2022年2月19日・土)、出句は雑詠3句+兼題「歌」の計4句。以下に一人一句と寸評を挙げておこう。


  水嵩の背伸び川面も春の歌        江良純雄

  鬼の目を覗けば寒き伽藍堂        渡辺信子

  ソプラノ歌手隣家に在りて夜の梅     武藤 幹

  饒舌にしたたかに降る夜の雪       渡邉樹音

  しずり雪五センチ伸びる傷ひとつ    らふ亜沙弥

  囚われた墨書春に向け滲む        照井三余

  酔いどれの決意新たに万歩計       杦森松一

  じょっぱりの歌石っこ流れ葉は沈む    金田一剛

  ふと墜ちる神のありなん花に蛇      大井恒行


★寸評★

「墓仕舞・・」ー墓仕舞は一世一代の決心、そう簡単には決められない。でも決めないといけないの心情を感じます(松一)。我が家でも墓仕舞いがあり、兵庫県と横浜の距離で大変な思いをしました。数の子の食感に近かったような、今更ながら感じています(亜沙弥)。子孫繁栄の意がある数の子。墓仕舞いとの取り合わせが非常に現代を感じさせる(樹音)。

「水嵩の・・」ー目の前の多摩川も今まさにそんな風情です(信子)。

「鬼の目を・・」ー勇気ある行動こそが、本質を見透かす!(幹)。

「ソプラノ歌手・・」ー暗い中にも梅は香りと姿を浮び上らせる。ソプラノ歌手のどうでも目立つイメージに重ねたか(純雄)。

「饒舌に・・」ー夜降る雪は確かにこのようだ!作者の感性に同感!!(幹)。

「しずり雪・・」ー5センチ伸びる事がどの様に計られるか?(三余)。

「囚われた」ー「囚われた」をこだわりと解釈。春の陽気にこだわりが緩んだか(純雄)。

「酔いどれの・・」ー酔いどれは、明日こそは、と決意はするのだが、なかなか実行に至らない。その決意は、いつも新たになされるが、酔いが醒めると、つい面倒くさくなる。そういう親父ってよくいそうだ。「万歩計」・・、おそらく健康維持のための散歩なのだ(恒行)。

「じょっぱりの・・」ー「じょっぱり」は津軽方言で意地っ張り、「石っこ」も賢治の童話にも出てくるなど、方言が上手く生かされている。ただ、「石は流れ葉は沈む」は、いささか安易かもしれない(恒行)。

「ふと墜ちる・・」ー 蛇を神としたのが面白い。しかも堕ちた神となれば、ほとんど人間。花は派手なほど人間くさくていい(純雄)。


 因みに、事務局・金田一剛からの伝言は以下、「3月も安全郵便句会とします。武藤さん、兼題提出お願いします」。


撮影・中西ひろ美「人生に『最後』を作る愉しみのありと教へてくれし先人」↑   

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