2022年2月9日水曜日

中村晋「牛逝かせ牛飼いも逝く被曝地冬」(「青山俳句工場05」第百号)・・


 「青山俳句工場05」第百号(編集・発行人 宮崎斗士)、表2に参加者名簿があり51名とある。目次は、工場らしく「工程表」と記されている。まず「出句一覧」は無記名で102句が並ぶ。そして「選句/7句」(うち1句特選)。次に「作品/作者/選/鑑賞」の作品は五十音順に並べられ、作者・選者名、その選句の寸評・鑑賞が付されている。そしてまとめに「高点句/総得点上位者」一覧がある。あとは通信欄に思い思いの便りが掲載されている。最後に「行員矢のごとし」(アンケートコーナー)とあって、第百回のテーマは「俳歴」、「俳句にまつわる思い出」,「自身の代表句」、「今後に目標」など、各人の人となりが伺える内容である。多いのは、もともと本誌が「海程」系と思われるので、金子兜太との出会いの絶景である。他に、第百回記念特別句会(兼題「百」)もあった。シンプルな俳句作品中心の誌面作りで、ごちゃごちゃもの欲しそうでないのが佳い。ともあれ、高点句の名から、一人一句をいくつか挙げておこう。


  花ひいらぎ記憶ぼかして父と会う     なつはづき

  綿虫や目蓋で受け止める訃報        宮崎斗士

  ふぃくしょんと聞こえて妻の嚏かな     望月士郎

  QRコードのように時雨るるか      山本まさゆき

  灯台のよう寒夜の介護ステーション     清水芙紀

  寝る前に温めておく未来かな        小松 敦

  氷雨かな鉛筆一本が重い          北上正枝

  わが鬱を掛けるにちょうどよい枯枝     黒済恭子

  よそはよそうちはうちです根深汁     平野菜穂子

  冬木の芽百歩で鳥になっている      小枝恵美子 

  百年の真ん中にいる歩道橋        近藤真由美

  百歳を照れて山茶花はらと散る       堀真知子

  百千鳥書店に老いというジャンル      芹沢愛子

  男なんて百害あって冬の恋        古知屋恵子

  石焼き芋百十四銀行を右へ         藤田敦子

  工場長手作りの月宇宙(そら)に百     鱸 久子



       芽夢野うのき「神様が咥えて踊るよ花八手」↑

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