本日は、現代俳句「金曜教室」第2回(於:現代俳句協会会議室)だった。宿題は、無季俳句2句の持ち寄り。想像以上に佳句がそろった。無季だけに向きにならざるを得ない面もあったようだが、それはそれで有意義な句会となった。ともあれ、以下に一人一句を挙げておきたい。
階段の上にこの世の出口ある 石川夏山
あおによし言葉は撃たれても死なず 鈴木砂紅
時間の矢不老は淋し不死はなほ 山﨑百花
原子雲ただ信号を待つてゐた 白石正人
終わらないゲームに耽る真っ赤な夜 宮川 夏
何故かくも蒼く深いか日本海 多田一正
気が付けば形見となりしメールあり 武藤 幹
波と粒束ね量子の貝と寝る 林ひとみ
口もとを手でかくしつゝ目で話す 高辻敦子
はみ出せるわが乳子への生命の水 赤崎冬生
ネゴトデスヘイタイサンノオカゲデス 川崎果連
おくれ毛に追いつく風のブィブラフォン 森須 蘭
吾ただひとりその中にこそ我ひとり 植木紀子
咎(とが)なくて死すやウクライナ人民 村上直樹
独裁者英雄たらんときょうも撃つ 岩田残雪
「朝玉子」ねだる孫連れ隣家行く 杦森松一
一期一会ふいに来る影を思え 大井恒行
次回、金曜教室は、8月19日(金)午後1時半~4時。持ち寄り雑詠2句。
★閑話休題・・池澤夏樹「大泉文世さんを悼むーある編集者の仕事」(「毎日新聞」7月13日付け夕刊)・・
書肆山田・大泉文世と鈴木一民について記されている。愚生のわずか二冊しかない単独句集は、鈴木一民の手によるもので、とりわけ、第二句集『風の銀漢』は大泉文世の手になるものだ。池澤夏樹の追悼文を少しだが紹介したい。それには、
その出版社の名を知る人は多くないし、そこでたった一人で千点を超える本を作った編集者の名を知るのは友人知人のみと言っていい。 出版社の名は書肆山田。編集者の名は大泉文世。もっぱら詩集と詩の周辺にある本を作ってきた。(中略) 書き手と読み手の間を本でつなぐ、という出版の本義から離れることなく誠実に本を作ってきた。詩人にとってはここから本を出すことが誇りだった。できあがった本を手にして嬉しくおもった詩人は大家から新人まで数多い。(中略) ただ黙々と働いて着実に美本を出し続け、この五月十九日、闘病の果てに他界した。この後は本が出ることはない。会社に残った資産はゼロ。ぼくの最初の詩集が二人態勢で作った最初の本で、作る予定で作れないままに終わった最後の本がぼくの詩画集だった。 サンテグジュペリが、ある僚友の死を「麦刈り男が、きちんと束に結わえあげてしまうと、自分の畑にごろんと寝転ぶようにして」と言っていた。(『人間の土地』)。 彼女の死がまさにそれだとぼくは思う。
とあった。愚生は50代の頃から、その鈴木一民に、次の句集をと慫慂されていたが、20年以上経っても、約束は果たせなかった。書肆山田で出して恥ずかしくない句が出来ていない、自分で納得のいく句ができていない、という、ただそれだけだった。それでも、次に出すときは,書肆山田から出せると思っているだけで、安心だったのだ。合掌。
芽夢野うのき「青信号ではねられている立葵」↑
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