2016年12月31日土曜日
藤川游子「何もかも夢魂(むこん)きさらぎ色の空」(『藤川游子句文集』)・・
『藤川游子句文集』(朔出版)は句集『游庵』と文集『敬天』二冊が箱に入れられている。句集・文集いずれも久保純夫の個人誌「儒艮」に発表されたものを一本にまとめたもの。文集については「儒艮」創刊号~15号に掲載した文章に加筆訂正をしたとある。それは、
ひとつは和田悟朗氏が忘れかけておられることを想い出して下さればと念じつつ、書き続けてきた。
平成二十七年二月二十三日、和田悟朗氏出立。その十日前のことになる。病室で『和田悟朗全句集』の函の装丁カラーを確認していただいた時、これでもう遺句集にはならないねー、と安堵されて弱々しくもハイタッチをしてこられた。こんなに希望に満ちたお別れができたのは本当に素晴らしいと思えた。(「あとがき」)
と記されている。中では「窓秋さんの色紙と短冊」を興味深く読んだ。高屋窓秋が薬を誤飲して入院手術したという話は、ちょうど愚生が最後の句集となった『花の悲歌』(弘栄堂書店)を作らせてもらっていた頃の話で、中の蛇笏のパロディ句、窓秋「くろがねの秋の軍隊沈みけり」は、じつは「艦隊沈みけり」が正しく誤植の句だった。優しい高屋さんは、僕も耄碌したな、視たはずなんだけど。再販の時に訂正しましょう」と言って下さった。著者校正はお願いしたが、当然ながら愚生のミスである。それにしても、游子女史、重信、悟朗、窓秋など、さまざま羨ましいお付き合いをされている。
ともあれ、句集から以下にいくつかの句を挙げておこう。
満月や四照花の実はあかあかと 游子
もう好いかい上空に春の雲
敗北の喜怒哀楽にサポーター
奥出雲吉丁虫の虫の息
銀屏風めがね外してかけて寒ぶ
目出度さを包む風呂敷大と小
炎天のアーチをくぐり逝き給う
岐阜蝶に似せたる翅を閉じひらく
秋霖のなか敗北の碑を建てる
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