「LOTUS」第45号(発行人・事務局:酒巻英一郎)、特集1は「現代俳句を問うⅠー新興俳句を中心に」、執筆陣は安里琉太「欲望される『風景』」、上田玄「白泉の季語論と赤黄男の戦場俳句をめぐって」、木村リュウジ「窓秋俳句の言語空間」、丑丸敬史「耕衣無縫」、九堂夜想「笑ふ枯野ー三鬼の『間』」、三枝桂子「山口誓子『激浪』以前」。対談は、志賀康と九堂夜想「俳句の表記と作品行為を問うー富澤赤黄男の技法を端緒としてー」。特集2は松本光雄「俳句形式という愛憎あるいは『こと』と『ことたま・ことだま』の俳句」。
いずれも、力の入った論考なので、本ブログでは紹介しきれない。興味のある方は、本誌に直接当たられたい。ここでは、それらの理論的表出の一人一句を以下に挙げておきたい。
大童あやめの國をわたりけり 丑丸敬史
揺り椅子のプラトンてきゆうらしあ 髙橋比呂子
川底の石は重さを放(ま)りて在り 志賀 康
国境のロープをくぐり白椿 曾根 毅
雨の番をして落書き 古田嘉彦
帰るとき飛花も落花もあおくなる 松本光雄
糸なぶり屍に萌えて千の芽は 無時空映
実南天まへもうしろも空の域 表健太郎
ハシビロコウ反世界にも落日が 九堂夜想
花の渦足元の空暗く染む 熊谷陽一
春昼のおおまがごとの口ありぬ 三枝桂子
古法眼
ここにあはれは
あらねども 酒巻英一郎
★閑話休題・・・堺谷真人「令和二年遏密の春逝かん」(「現代俳句」6月号)・・・
「LOTUS」同人の丑丸敬史は、「豈」同人でもあり、「豈」つながりで堺谷真人。「現代俳句」6月号に特別作品「遏密の春」10句を寄稿している。近年、関西の芦屋に、東京より再転勤して(地元に戻って)、仕事も俳句も活動的な日々を過ごしているようである。また、今号の「現代俳句」は、武良竜彦「宇多喜代子俳句考」が掲載されている。宇多喜代子のこれまでの作品によく迫って真っ当に記している。そのなかに、
宇多氏の詩想は、普通の意味文脈では言うに言えないこと、言葉を失ってしまうような事象の中の命の有り様、そんな不可視の領域を可視化し、その沈黙の重さと深みに向かって言葉を与えることに重点が置かれているようだ。
とあった。ともあれ、以下に同誌掲載句よりいくつか挙げておこう。
春満月こよひ迎への来るといふ 堺谷真人
八月の赤子はいつも宙を蹴る 宇多喜代子
八月に焦げこの子らがこの子らが 〃
白髪の天皇にこそ夏の月 〃
一億総活躍それ以外は焼く 赤野四羽
幾千代も散る美し明日は三越 攝津幸彦
撮影・鈴木純一「bestよりbetterよりただお人好し」↑
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