2021年8月12日木曜日

池田澄子(小学4年?作)「万歳の嵐の中を天皇は静かに帽子振られて去りぬ」(「傍点」創刊号より)・・・


 「傍点」創刊号(傍点)、変な同人誌、面白い同人誌、それも創刊号を出したら、主催の長嶋有は同人を脱退すると、「編集後記」にあった。第一特集は「傍点の十句会」、第二特集は「あら丼さんー新井勝史の俳句ー」である。巻頭は、「池田澄子さんインタビュー」、さらに村井康司インタビューなどがある。「傍点」の誕生までのいきさつは長嶋有「傍点夜明け前」に詳しい。その冒頭に、


95年~

 傍点はインターネットのツイッターで集まった面々で結成された団体であるが、主催(主宰にあらず)である僕の俳句活動もまた、インターネットの前身、パソコン通信で始まった。

 筒井康隆氏が中心となって行われた「パスカル短編文学新人賞」に応募するためにASAHIネットに加入したのが1993年のこと(当時21歳)。(中略)

その第七句会のメンバーが中心となって俳句同人誌『恒心風』が95年創刊。パスカル短編文学新人賞応募者(受賞者の川上さんを含む)で、創刊メンバーは16名。


 とあった。色々面白いことがふんだんにある同人誌だが、「特に重要な傍点キーワード11」の中の「①一文字俳号」には、同人50名の俳号一文字一覧がある。例えば、長嶋有は「凡」。この創刊号を愚生に送ってくれた山科誠は「科」とある。また「傍点の十句会」はそれぞれのユニークな吟行記録である。もっとも最近の(十)は「ストリートビュー吟行/苫小牧・カンヌ編」(中島純也・野口真輝)、新型コロナウイルス蔓延による自粛のため外出ならず、2020年5月に行われた「Googleストリートビュー」を使った自宅にいながらの、地図上吟行の報告記である。


 5月23日の句会当日、参加者各々がパソコンやスマートフォンから、コロナ禍ですっかりおなじみになったZoomを起動する。画面に参加者の顔が並ぶ。全員集合したら出発だ。

    夏帽子被り画面の街に行く       麗

 「じゃあ出発しまーす」と、長嶋さんの掛け声で吟行が始まった。(中略)

    やませ吹くベガスベガスの駐車場    珈   (以下は句のみを抽く)

    ネピア柄の団地に窓や若葉風      寝

    ストリートビュー夏草を越えられず   科 

    四階をともに上りし蚊や払う      森

    見えないが初夏のダクトをくぐっている 炭

    夏の空団地がちょっとだけ動く     与

    風薫る野に並べられ社宅かな      友

    スプーンにアイス飛行機の上も雲    凡

    カルーセル一曲分の夏日陰       雪

    夏服のドアマンの追う獣かな      裏

    よじのぼるアニエス・ヴァルダ大西日  徳

    雹晴れて赤絨毯にブラピ来ぬ      栗

    ソワレはね繰り出す街や星涼し     野

    タキシード脱いでシャワーやカンヌの夜 中

    野外シネマの灯りの届くバルコニー   黒      


 ここからは、「豈」同人でもある池田澄子の貴重なインタビューを少しだが、引用しておこう。


(前略)長嶋 はい。次の質問にいきますか。

山科 質問ではないんですが、(「柱は斧を夢に見るか」/『此処』38ページ)という句がありますよね。人間以外のものに対する池田さんのまなざしが興味深いと思いました。

池田 ありがとうございます。

長嶋 そうですね。なんか人間以外のものと思ってない感じがあるんだよね。その感じはしばしば出てくる。

池田 ここの質問だったのか、こないだの現俳(現代俳句協会の「第44回現代俳句講座」)のほうだったのか、ちょっと私混ざっちゃったけど、電線の・・・。

徳山 ええ、私が質問したのかなと思うんですけど。「電線の芯痒からん凍月夜」「電線が痒い」っていう発想。

池田 それと似てますよね。今の話。私、擬人化って嫌いなんですよ。なんか、一番初歩的な感じがするのね。小学生に詩を書かせると擬人化になる、みたいな。そういうのがあって、擬人化はまずしないつもりなんだけど、読む人がヒョイと読むと、「ああ、なんか擬人化してる」みたいなふうにとったりされるってこともなくはないかなと。別に電線を擬人化してるんじゃなくて、痒いかなって私が思ってるだけね。

長嶋 確かに擬人化って思われちゃう隙があるとも言えるよね。

池田 「電線が痒がっている」と言ったら擬人化。「電線が痒いか」って言ったら、こっちの気持ち。

長嶋 そうですよね。実はすごく厳密なんだよね。どの句も擬人化ではない。


 池田澄子の「つうの会」という句会で、皆さんは研鑚を積んできたらしい。とはいえ、「傍点」のメンバーは、長嶋有によって立ち上げられ、主に20代、30代の同人たちによって構成されている。ただ、第二特集の「あら丼さん・新井勝史」(高崎在住)だけが、2019年9月10日に、腎不全の為に44歳で亡くなられている。


   屋根の雪軽し藤岡ジャンクション     あら丼

   朧夜や軟着陸の余力出す

   骨見えし猫を埋めたり竹の秋

   人生の仮性包茎五月闇

   終戦記念日の派手な乱打戦  


 愚生にとっては、村井康司や長嶋肩甲(有)は「恒信風」のメンバーであり、攝津幸彦や三橋敏雄、池田澄子などのロングインタビューが掲載された実に貴重な雑誌だった。とりわけ、攝津幸彦が生前にかくまで語ったインタビューは、最初にして最後だった(攝津幸彦は「豈」同人のメンバーにさえ、余り語ってはいない)。そして、寺澤一雄は、「童子」に居たころをも思い起させてくれる。ともあれ、「傍点」2号・次号を楽しみしている。



       芽夢野のき「西瓜の花ひそかに天つ日に祈る」↑

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