2021年8月26日木曜日

中西ひろ美「やどるべき魂を宿らせほたるぐさ」(「垂人(たると)」40)・・・

 

 「垂人(たると)」40(編集・発行 中西ひろ美・広瀬ちえみ)、今号は、中西ひろ美の歩みとでもいえばよいのか、中西ひろ美編「風谷・鳴峯・走尾・垂人(2001~2021)」の総目次が掲載されている。そして「垂人」も途中までは飛沓舎で出されている。20年間の軌跡である。短詩型のみならず、詩、エッセイなども収載されているが、本号の目玉は、連載らしい鈴木純一の「超訳 芭蕉七部集/『春の日』(一)伊勢詣の巻」である。短い部分のみになるが、以下に引用しておこう。


 (前略) 

  傾城(けいせい)乳をかくす晨明(ありあけ)

霧はらふ鏡に人の影移り          雨桐

 女が鏡の曇りを拭う。さっと明るくなったその中で、肘を挙げ、後ろにまわして髪を直す。襟元がはだけ乳房が覘く。手が止まった。女の後ろで、何かが動く。

 俺だ。目が合った。「やだよ」女は襟をかき合わせた。

      ▽

霧はらふ鏡に人の影移(うつ)

 わやわやとのみ神輿(ミコシ)かく里   重五(愚生注:わやわやは踊り字)

ご神体の鏡を磨きあげ、神輿の正面に掲げる。日が高くなり、霧も晴れた。男達は、さあ来い、とばかり逸っている。肩を入れて神輿を舁き、練り歩き、揉みに揉む。押し合いへし合するものだから、鏡は上へ下へ、右に左に、前に後ろに暴れ回る。もみくちゃになっている男達の姿が映るやら、日の光が反射してあちこち跳ね回るやら、エラい騒ぎ。 (以下略)


 ともあれ、本号より、いくつかの作を挙げておこう(詩篇は除く)。


   青だもの花やじわじわ満ちてくる      川村研治

   木の花は木の花らしく白く咲き猫はねむりの静のなかへ  中西ひろ美

   ブタクサの乱舞に答えなき真昼       野口 裕

   蟻が引く蟻の骸を見て泣きぬ       ますだかも

   来ましたよ気まぐれの木に啄木鳥が    高橋かづき

   コロナに任せて悪魔はお昼寝中       中内火星

   あぶくたったたべてみよ わっお月さま   渡辺信明

   なみだなみだみなみからもきたからも   広瀬ちえみ



        撮影・鈴木純一「秋の虹世界の正しい終わりかた」↑

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